結論から言うと、感性や前提が違いすぎると、コミュニケーションはかなり困難になる。という話だと思った。日頃よくSNSで、ぶつかるやつ。
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?では、認知科学の視点から「なぜ人の話はこんなにも伝わりにくいのか」が細かく説明されている。そして、その対処法についても触れられている。
本の中では、過剰一般化、代表性バイアス、エコチェンバー現象、信念バイアスといった言葉が出てくる。
人は物事を認知し、その時点で自分なりに解釈する。
さらに、その解釈込みで記憶し、時間が経つと記憶そのものも変質していく。
しかも記憶容量には限界があるので、多くを忘れていく。
つまり、人間は「事実そのもの」を共有しているつもりでも、実際にはそれぞれ別々の解釈世界を生きている。
そんな状態でお互いに認識を共有し合うのだから、そもそも簡単なはずがない。ということを改めて実感させられた。
仕事で「誰にでも分かりやすい文章を書こう」と苦労した経験がある人には、かなり刺さる内容だと思う。実務的にも役立つ場面は多そうだ。
ただその一方で、日本語を使っているはずなのに「なぜかまったく話が通じない」という場面では、結局ある程度は「あきらめる」しかないのでは……とも思った。著者もコントロールしないことの大切さを説いている。
特に、自分の考えだけを絶対視しているような人には、言葉そのものが届きにくい。
もちろん、「それってお前のことでは?」と思う人もいるのだろう。
でも実際、人はみな自分の前提や価値観を通してしか世界を見られない。
認知科学はそこをバイアスや認知の歪みとして説明するわけだけれど、結局のところ、「相手に自分の考えを完全に理解してもらい、思い通りに動いてもらう」という時点で、かなり無理のある期待なのかもしれない。
だから、「ほどほどにしておいたほうがいい」という感想になる。
というか持論だけど「言葉で他人は変わらない」という話は、そのまま自分自身にも返ってくる。つまり、「言葉だけでは自分も変わらない」。
いくらメタ認知によって「理屈として正しい」と理解しても、本人に変わる意思がなければ行動は変わらない。前提や価値観、なぜそう考えるのか――そういったものを共有することは、他人相手だけではなく、自分自身に対してですら難しい。
なので、「なぜ人と話が噛み合わないのか」を認知科学の言葉で整理したい人にはかなりおすすめできる本だと思う。ただ、「これを読めば根本的に解決する」という特効薬を期待して読むと、少し肩透かしを食らうかもしれない。
最後の方には、「コントロールできないものはコントロールしようとしない」といった趣旨のことが書かれていて、「ああ、結局そこに着地するのか……」と思った。
そして気づいた。特効薬を求めていたのは、結局、自分のほうだった。。。

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