創作|噴水の向こう側

徒然草2.0

AIに仕事を奪われた私は…今までの仕事を辞めて、

中国の大富豪・李さんの屋敷で、用務員として働くことになった。

仕事は掃除と運転と雑用。待遇は悪くなかった。

採用のとき、李さんと庭を歩きながら、年頃の娘がいることを話した。

「今度、機会があったら娘さんを連れてきなさい。庭でお菓子でもいただきましょう」

李さんはニコニコと笑っていた。


そのことを後で家政婦Aに話すと、彼女は怪訝な顔をした。

「……顔に傷でもあると言って、連れてこないほうがいいわ」

理由は教えてくれなかった。

結局、私は断る理由が重い浮かばず、娘を連れて屋敷へ行った。

庭で娘が飲み物を運んでいると、お盆が突然、不自然に傾いた。

飲み物が李さんにかかり、李さんと娘はそのまま噴水へ落ちた。

私たちは慌てて謝ったが、李さんは濡れた服のまま憮然とした顔でこちらを見ていた。


李さんが部屋へ戻ると、家政婦Bのみが現れた。

「娘さんに謝りたい気持ちがあれば、夕暮れ時に一人でいらしてください」

嫌な予感がした。

娘が李さんの部屋へ向かう時、私は庭へ侵入して噴水の茂みに身を隠していた。

何かがあれば、すぐに飛び出すつもりだった。

やがて、娘が部屋の中で頭を下げる姿が見えた。

ところが李さんは、謝罪とは別のものを求めているようだった。

私は茂みから飛び出そうとした。そのとき、Aが私の腕をつかんだ。

「待って、私がどうにかする」

Aは李さんの部屋をノックし、巧みに李さんの気をそらした。

その隙に娘は出てきたのでホッとした。


ところが2日くらい後、その信頼していたAが仕事を辞めると言ってきた。

「ここから逃げたいの。でも私、命を狙われているというか…」

それ以上、聞くのも怖いがすべてを察した。

そして、私にも仕事を辞めたほうがいいと言った。

私は同意して、それまでに稼いだ金以上のお金をAに渡して、屋敷を去った。

それから李さんとは関わっていない。

ただ後になり、ある人からAはまだあの屋敷で働いていると聞いた。

ここから逃げたいと言っていたのに、命を狙われていると言っていたのに。

それなのに、なぜ?

「…あれ?」

あの屋敷の噴水だけが、今も夕暮れの庭で静かに水を吐き続けているような気がした。

徒然草2.0
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