AIに仕事を奪われた私は…今までの仕事を辞めて、
中国の大富豪・李さんの屋敷で、用務員として働くことになった。
仕事は掃除と運転と雑用。待遇は悪くなかった。
採用のとき、李さんと庭を歩きながら、年頃の娘がいることを話した。
「今度、機会があったら娘さんを連れてきなさい。庭でお菓子でもいただきましょう」
李さんはニコニコと笑っていた。
そのことを後で家政婦Aに話すと、彼女は怪訝な顔をした。
「……顔に傷でもあると言って、連れてこないほうがいいわ」
理由は教えてくれなかった。
結局、私は断る理由が重い浮かばず、娘を連れて屋敷へ行った。
庭で娘が飲み物を運んでいると、お盆が突然、不自然に傾いた。
飲み物が李さんにかかり、李さんと娘はそのまま噴水へ落ちた。
私たちは慌てて謝ったが、李さんは濡れた服のまま憮然とした顔でこちらを見ていた。
李さんが部屋へ戻ると、家政婦Bのみが現れた。
「娘さんに謝りたい気持ちがあれば、夕暮れ時に一人でいらしてください」
嫌な予感がした。
娘が李さんの部屋へ向かう時、私は庭へ侵入して噴水の茂みに身を隠していた。
何かがあれば、すぐに飛び出すつもりだった。
やがて、娘が部屋の中で頭を下げる姿が見えた。
ところが李さんは、謝罪とは別のものを求めているようだった。
私は茂みから飛び出そうとした。そのとき、Aが私の腕をつかんだ。
「待って、私がどうにかする」
Aは李さんの部屋をノックし、巧みに李さんの気をそらした。
その隙に娘は出てきたのでホッとした。
ところが2日くらい後、その信頼していたAが仕事を辞めると言ってきた。
「ここから逃げたいの。でも私、命を狙われているというか…」
それ以上、聞くのも怖いがすべてを察した。
そして、私にも仕事を辞めたほうがいいと言った。
私は同意して、それまでに稼いだ金以上のお金をAに渡して、屋敷を去った。
それから李さんとは関わっていない。
ただ後になり、ある人からAはまだあの屋敷で働いていると聞いた。
ここから逃げたいと言っていたのに、命を狙われていると言っていたのに。
それなのに、なぜ?
「…あれ?」
あの屋敷の噴水だけが、今も夕暮れの庭で静かに水を吐き続けているような気がした。


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