まあ、「営業は売れないものを売ってこそ営業」なんて言葉も聞いたことがあるし、「エンジニアを人間だと思ってはいけない」というルールがエンジニアのミカタ関連の企業にはあるらしいけど、成果だけを追い求めると出てくるそういうフレーズが出てくるんだろう。
私がこれまで出会ってきたIT系の会社は、SESに限らず、少なくとも表向きは真摯だった。裏では営業がシビアなことを言っていたり、多少の建前があったりするにしても、ルールを著しく逸脱するような会社には出会わなかった。という意味では、ここまでいっちゃう企業は珍しいのだろう。
だからこそ、今回のエンジニアのミカタをめぐる暴露情報には驚いた。社内チャットとされる資料が公開されており、スキルシートの経歴詐称や口コミ投稿の強制、退職勧奨を「ポア」と呼ぶことなど、にわかには信じがたい内容が次々と取り上げられている。フィクションとして盛っているのではないかとすら思えてくる数々。
もちろん、告発された内容のすべてが法的に危ういわけでもないだろうし。ただ、会社側もスキルシートの一部に過度な誇張や事実と異なる記載があったことを認めて、調査委員会の設置と再発防止を表明したとも報じられているとか。
それにしても驚くのは、これが小規模なワンマン企業の話ではないということだ。報道や会社公表によれば、同社は数百人規模のエンジニアを抱える急成長企業だった。これだけの規模になっても、こうした問題が起こりうるのか…と思う。
組織が大きくなれば、普通は個人の暴走を抑えるためのルールやチェック体制が必要になってくる。しかし、売上や採用数などの数字を最優先し、経営者や幹部がそれを容認するのであれば、組織の規模は歯止めにならない。むしろ、営業担当者が数字を求められ、管理職がその数字を求められ、現場のエンジニアや顧客ががそのしわ寄せを受けるという構造ができあがってしまうのかもしれない。
今回の件で特に問題だと思うのは「スキルシートの魔改造」だ。
エンジニアの経験を実際よりも豊富に見せかければ、営業段階では案件を獲得しやすくなるかもしれない。しかし、客先に入った後で期待された仕事ができなければ、本人も苦労するし、顧客からの信頼も失う。契約の終了や交代につながる可能性もある。本人が本来持っている能力まで疑われることになれば、長期的にはエンジニア自身も損をする。
そもそも、経歴を水増しすれば必ず営業成績がよくなるというものでもない。現場で求められるスキルとの食い違いが大きければ、結局は問題が表面化する。短期的に案件へ押し込めたとしても、それが継続的な利益につながるとは限らないのではないか。
そして、こうした行為は今回のように社内資料が公開されれば、会社だけでなく関係者個人の信用にも影響する。スキルシートを改変するよう指示されたとしても、エンジニア自身が自分の経歴やスキルを確認し、事実と異なる内容には安易に同意しないことが大切だと思う。
一方で、今回の問題をもってSESそのものが駄目だと結論づけるのも違うだろう。
SESを利用する企業があるのは、必要な人材を必要な期間だけ確保したいという需要があるからだし、SESを職業として選ぶエンジニアがいるのも、さまざまな現場で経験を積めたり、自分に合った働き方を選べたりするからだ。そうした需要と供給がある限り、SESという仕組みそのものがなくならない。
問題なのは、エンジニアを商品として扱うことそのものというより、商品として扱うのであれば最低限守るべき契約やルールすら軽視し、人間としての尊厳や本人のキャリアまで犠牲にすることではないか。
SESは顧客とエンジニアの間に営業や会社が入る仕組みだからこそ、情報の非対称性が生まれやすい。顧客はエンジニアの実力を採用前に完全には把握できず、エンジニアも自分がどのように売り込まれているかをすべて把握できるとは限らない。その隙間を埋めるのが本来は営業や会社の役割のはずだが、そこを悪用すれば関係者の誰かにしわ寄せがいく。
今回の暴露を見て、SES業界全体が駄目だとは思わない。ただ、会社の規模や知名度、還元率の高さ、エンジニアの味方を名乗る理念だけでは、その会社が本当に信頼できるかどうかは分からないのだと改めて感じた。結局のところ、営業がどれだけうまいことを言っても、エンジニアの経歴や能力を偽ってまで案件を獲得する会社は、長い目で見れば自分の首を絞めることになる。業界自体が沈むことはない。というのが感想になる。
あと、付け加えるならば…未経験エンジニアこそ業界の信頼を勝ち取っている企業で働いたほうがリスクは低いのでは?と思う。

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