yatzy(ヤッツィー)という、5つのダイスを交互に振って得点を競うゲームがある。もともとは「Yacht(ヨット)」というゲームが原型で、5個のダイスを使ってポーカーのような役を作るゲームとして少なくとも1930年代には存在していたらしい。現在のYahtzeeはそこから発展したものだという。ヨットの上で遊ばれていたという話もあるようで、名前の由来もそこから来ているらしい。
運要素がかなり強く、戦略も限られているのだが、勝負する相手や周囲の顔色をうかがいながら遊べるし、一発逆転もあれば、まるでツキに見放されたように何もそろわないこともある。そのあたりの、ゲームに振り回される心理がどことなくギャンブルっぽくていい。
リアルでやったことはほぼないが、チンチロとか、あとは麻雀や花札に近いドキドキ感がある気がする。ダイスをそろえていくところはポーカーみたいでもあり、「運だけではなく自分で選んでいる」という感覚もある。
そう考えると、このゲームバランスを考えた人はすごいと思うし、こういうゲーム性を面白いと感じるのは万国共通なんだなとも思う。シンプルなのに白熱するし、誰でもルールを理解しやすい。というか、ルールを全部知らなくても、遊んでいるうちに「なるほど、同じ数字を集めるのね」「今度は連番を狙うのか」と自然にわかってくる。
しかも、さいころ5つと紙と鉛筆があれば遊べる。道具としては恐ろしく原始的なのに、やっていることは意外と奥深い。カスタムルールをいろいろ入れても、それはそれで面白そう。
ちなみに、少し戦略を考えてみると、このゲームは「何を狙うか」よりも「いつ諦めるか」のほうが重要なのかもしれない。
たとえばスモール・ストレートとラージ・ストレート。最初に3、4、5あたりが出たらストレートを狙いたくなる。特に2、3、4、5や3、4、5、6までそろっていれば、かなり強い形なので、そこから余計なダイスを振り直してストレートを狙う価値が高い。逆に、バラバラの数字からラージ・ストレートを追い続けるのはかなり危険だ。ラージ・ストレートは40点と大きいが、狙い始めるなら「あと1個」という状態まで持っていけるかが重要になる。
3カード、4カードを狙う場合も似ていて、最初から「今日は4カードを作るぞ」などと決めるより、まず同じ数字が2個、3個出たときに、その数字を残して状況を見るほうが効率がいい。特に5や6が複数出ている場合は、上段の5・6の得点にも使えるので、無理に4カードにする必要がない。
実はここが結構重要で、ヤッツィーは上段の1~6を合計63点以上にするとボーナスが入るルールなので、単純に「一番派手な役を作るゲーム」ではないっぽい。たとえば6が3個出れば、それだけで18点。さらに4個なら24点になる。4カードやヤッツィーを狙うより、そのまま6の欄を埋めたほうがゲーム全体では得になる場面もある。
そして一番派手なYatzy、つまり同じ数字5個は、実はかなり狙いにくい。最初から5個同じになる確率は当然ものすごく低く、3回まで振り直せるとはいえ、長期的な得点効率だけを考えれば、毎回Yatzyを狙うのはあまり合理的ではない気がする。Yatzyそのものの期待値は低く、むしろ上段のボーナスやストレート、フルハウスなどを状況に応じて取っていったほうが安定する。
ただし、最初から4個同じ数字が出てしまった場合は話が別で、さすがにYatzyを狙いたくなる。ここで最後の1個に賭けるのは、いわば「合理的なギャンブル」なのだろう。
結局、効率のいい遊び方は「Yatzyを狙う」のではなく、出た目に応じて一番期待値の高そうな方向へ乗り換えていくことなのだと思われる。
3個同じなら3カードや上段を考える。4個同じなら4カードやYatzyを考える。3、4、5のような連番が出ればストレートを考える。フルハウスができてしまったら、25点を確保してしまうのも手だ。逆に、何もそろわなかったときには、1や2のような低い数字を捨て欄として使ったり、最後まで残したい「Chance」を温存したりする。
つまり、最も効率のいい戦略というのは、実は「最初から決めた役を最後まで追いかけない」ということなのかもしれない。
運のゲームなのに、運だけではない。かといって麻雀のように何十手も先を読む必要もない。「この目ならこっち」「これはもう諦めてこっち」と、その場その場で判断するだけでいい。
この、考える余地がほんの少しだけ残されているところが絶妙なのだと思う。
パターン自体は限られているのだが、こうして考えてみると、確率と得点と欲望のバランスをどう取るかという、なかなか人間臭いゲームだ。


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