『夕闇の川のざくろ』(江國香織)を読んだ。
嘘つきな女の子「しおん」の話につきあう「私」視点の童話。
人なんてみんなほんとうじゃない。ただ物語があるだけ――そんな調子で延々と続いていくのだけれど、最後まで読んでも「で、だから何なの?」という感想しか残らなかった。
しおんの話に唐突に登場するピエールは、恋人だったり、赤の他人だったり、鳩になったりする。
なにこれ、ホラーなの?
なんかだかしおんは、この”私”との関係性が壊れてしまうことを恐れているみたい。
…まあ、そもそも人が作り上げた事実なんて、集団が共有する嘘みたいなもので、それなら思いつきのフィクションのほうがよっぽど筋が通っている。
そう考えると、小説を読んで楽しむなんて実はけっこう不幸なことなのかもしれない。
……いや、別に作中でそう描かれているわけではないのだけれど。
これは作家自身がその皮肉を童話にしてしまったのか。
それとも「私」が「しおん」という化け物みたいな存在を生み出してしまったという物語なのか。
なんだか不気味な話だと思う人と、いい話だと思う人がいるみたい。
私はよく分からなかった。
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