前日、カップラーメンを食べたのを覚えているーー
その割り箸を手にとり、
ガスコンロで火を灯して、
しばらくしてから火を吹き消した。
ワンカップ大関の瓶に水をいれて差し込み、
“何かが違う”
割り箸を燃やした煙は、狭い部屋の匂いにかき消された。
とてもじゃないが、線香の代わりにはならなかった。
むかし、”神は死んだ”と言った人がいるらしい。
そのせいか知らんが、そいつは頭がおかしくなって死んだ。
ニヒリズムに陥ったとか陥っていないとか、
超人になったとかならなかったとか。
…ふと男は、そんな話をどこかで読んだのを思い出した。
短絡的な解釈だったが、男はあまり気にしていなかった。
そして、割り箸が入った瓶を母の遺骨の前に置き、
「何で死んだんだ!」
祭壇を設えて男は何かに祈るつもりだったが、
急にバカバカしくなり、頭の中に色々な感情が沸いてきた。
「これから一体どうすればいいんだ!!」
ふいに沸いた怒りが男の心を支配した。
少し先の未来を考えただけで恐ろしくなった。
他にも色々な思いがあったはずだが、全て怒りで吹き飛んだ。
男は奇声をあげて、母の遺骨が入った箱にワンカップ大関が投げつけた。
あたりに水が飛びっ散る。
男にとって特に気にするものもなかったが、
生前に母が買ってきたB5サイズの月刊誌に水が垂れた。
ーー○○小説新人賞 特集ーー
未だほぼ読んでいない其の雑誌に水が染み込むのを嫌がって、
男は服の袖で拭った。
自分の名前はなかった。それだけで、読むに値しない。
さっきよりも強い怒りが込み上げてきたが、
それを買ってきた母親の姿を思い出して少しだけ冷静になった。
「一体どんな作品が選ばれたのだろう?」
少し冷静になってその場に寝転んで特集ページを開いた。
しばらく黙読した後、彼はまたいつものように、
いやいつも以上に怒った。
「驚いた!丸パクリもいいところだ!!」
しばらく部屋で再度奇声をあげて暴れた。
それでもまったく気持ちが収まらなかった。
その日の晩、男は眠らずにある計画を思いついた。
「許せない!絶対に許せない!!」
僅かなお金が入った財布とその雑誌をリュックに詰めて、
日が昇る前に男は家の外へ出ていった。
(つづく)
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