戯言。幸せそうなおっさんの横顔

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60歳ぐらいのおっさん。

いつもじゃないけど平日の夜、3回に1回は会っている気がする。

ただ会っているって言っても目撃しているだけだけど。

今日も”出会っちゃった”。

俺が家に帰る途中の駅の改札の近くにいる。

幸せそうな顔で経済新聞を読んでいることが多い。

レモンサワーみたいなの1,2缶ぐらい飲んでいたりもする。

はじめホームレスかなと思ったけど、身なりがそれなりに綺麗なので違うかも。

でも、なんでこんな人通り多いしょんべんくさいところで安酒を飲んでいるんだろう。

まあ、金持ちではないだろう。

頭はハゲ散らかしていて見窄らしい。

でも、幸せそうに見えるのだ。

幸せそうな顔って言っても労働から開放されているというよりは、

普段から苦でも楽でもない…。

無表情なのに平穏というか安穏というか。

心の中に波風たっていなくて、静かーな海って感じ。

勝手な決めつけなんだけど自分はこの人に幸福度で勝てないなと思うんです。

出会う度にそのオーラに「勝てないな」「俺は辛いなあ」と思う。

飲み屋で馬鹿騒ぎしてニコニコしている人たち見ても何も思わないのに、

俺このヒトだけは見ていると自分が辛くなる。

こんな表情で新聞読んだり安い缶酎ハイ飲めたらいいのになーと思ってしまう。

自分より苦労している人を見ると、自分のほうがマシなんだとホッとする…その性格の悪さが、逆に刺激され、自分よりも何も持っていなさそうな人が幸せっていうのに、嗚呼俺は絶対に勝てないな、と。

こんな話を真面目に誰かにでもしてみろ、

「お前のほうがもっと幸せなものあるのに何を言っているんだ!」と怒られるだけだから、

誰にも言えない。

しかたがないから、誰も読まないブログに脚色してなにか書いて、気持ちをごまかす。

今日もその人に会って、打ちのめされた気分で、改札をくぐり抜けて家に帰ってきた。

幸せなんて、結局のところ本人が心の中でどう思うかであって、立場とか状況とかどうでもいいんだなと改めて確信する。第一、私がこんなにも時々感慨深い思いにさせられているのを、このおっさんは知らない。知る由もない。

ま…とりあえず寝る前に新聞でも読んで缶酎ハイ飲めていればいいのかもしれない。

そう、思い直すと、少し幸せになれる気がする。

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