誰に聞いたか知らないけど、オアシスにつくウェストランドには、こんな緑の木々や澄んだ水のある自然公園なんてほとんどなかった。まるで隠れ家みたいな場所だ。そこに住む連中に“彼”と呼ばれるやつに会うため、アウトサイダーの私が招かれた。
招かれた以上、ねっとりした樹液を飲み干さなきゃならなかった。飲むと、頭の中に霧がかかったみたいに周りがぼやける。でも同時に、やけに明るくなる。トランス状態ってやつだ。気がつけば、もう深い森の奥に一人で立っていた。これが“彼”にたどり着くための儀式なのか、それともただの狂気か…。
グローブの林を抜け、洞窟に入ると、ミルレークキングが襲ってきた。アサルトライフルの弾が貫通しない。倒すのにひと苦労だ。しばらく探索して、オアシスの正体もわかった。放射能で木と一体化した“木人間”が、この地に根付いていたらしい。
そして“彼”は、私に自分を殺してほしいと懇願した。人間の尊厳のために殺すべきか、それとも、彼を生かしておくことで人々の思いやこの森を未来に託すべきか。綺麗な話なんて両立しない。やっと、Folloutらしいジレンマにぶつかった気がした。
ミルレークキングの装甲は分厚いし、キャップは儲からないし、どっちにしろオアシスの話に首を突っ込み時間と銃弾を損してるのは間違いない。”彼”いやハロルドを殺してやってもよかった。でも、なんとなく、動いてる心臓を止める勇気はなかった。だから、ハロルドはおそらく意志なく生き続けることになった。文字通りの植物人間さ。彼は生前、こう言っていた。「人々は私の言葉を理解はしない。でも、私の言葉をよく聞く」って。要は、他人は自分の都合で言葉を解釈するけど、発言者を理解してやろうとはしない。もしかしたら、俺たちも神の前では同じことをしてるのかもしれない。
森の奥に住む、あの巨木の老人。実は元は人間だったんだな。これ、俺だけが知ってる秘密だ。
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