読書|『日本がダメだと思っている人へ』(田北真樹子)ダメならダメなりにやるしかない。

徒然草2.0

YouTubeで田北真樹子さんを見て、「この人、かなり切れ味鋭いな」と思った。月刊『正論』の編集長も務めてきた人で鋭さに納得がいく。この人と江崎道朗氏の共著 『日本がダメだと思っている人へ』 を読んだ。この人が主張する国家安全保障と現状認識がためになった。

この本では、日本の防衛・安全保障がここ数年でどのように強化されてきたかがわかりやすく説明されている。台湾有事を「日本有事」と捉えるべきかという議論、自衛隊がどこまで動けるのかという存立危機事態の問題、防衛力強化は単なる軍拡ではなく経済活性化にもつながるという視点も提示されている。防衛産業への投資が地域経済を刺激するという話は以前からなんとなく知ってはいたが、防衛庁が公にメリットとして語るようになったのは時代が変わった証拠だと感じた。

自分はもともと「台湾は中国に飲み込まれてはならない」と思っていた。しかしSNSを見ると、「台湾は国際的に国と認められていないから日本は関与すべきではない」という意見が意外と多い。だが米中のパワーバランスが崩れつつある今、日本が曖昧な姿勢のままでいるのはむしろ危険だ。中国は国内崩壊を防ぐため強硬姿勢を取らざるを得ない構造にあり、日本としても「ただ見ているだけ」で済む状況ではない。

岸田政権で防衛費の大幅増額が進み、続く政権では米国製装備の調達方針も明確になった。国民負担は増えるが、「備えあれば憂いなし」と考えれば国を守るための投資として理解できる。防衛費には内需拡大の効果もあるとされ、これも以前はあまり表に出てこなかった視点だ。

台湾有事を存立危機事態と言っただけで反発する声があるが、日本がこちらから仕掛けるという話ではなく、米軍が参戦したら自衛隊は集団自衛権のもと行動するという、今まで暈していた趣旨の発言で歴代首相と比べて曖昧さがなくなりクリアに語るようになっただけ。そこをわざとミスリードしてあれこれ言っても誤った前提で話が進んでいる。些細なことで日中関係が崩れる恐れは懸念するものの知識人やメディアが話の前提からいつ出してあれこれ言うのは呆れてくる。だいたい沈黙は外に向けて誤ったメッセージになるわけで、米中台のパワーバランスが崩れれば軍事力行使は時間の問題という見方もあり、シーレーンが封鎖されれば日本は深刻な食料危機に陥るという試算すらある。

全体を通して、この本は悲観論でも楽観論でもなく、「現実的な危機」と「その中で何を備えるべきか」を冷静に提示している。まさに今の日本に必要な視点だと思った。

…余談なんだけど、台湾有事…というか台湾併合の局面で、米軍が中国を刺激しさえしなければ平和裏に終わる」と信じている人が目指すべき日本の将来像は、本来なら「日米安保の解消」や「沖縄を緩衝地帯として位置づける宣言」だと思うのだが、なぜか彼らはそこを目指そうとしないのか、不思議だ。

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