この文章が誰かにググられたからといって、たぶん何も思われないと思いますが――特に何かを批難する目的で書いているわけではありません。戯言です。そのことだけ先に断っておきます。
さて、どこぞやの宗教団体の小冊子を趣味で集めている……わけではないのですが、内容が気になって、つい手に取ってしまうことがあります。
別に小冊子に限らず、若い頃は『大蔵経』を何十冊も買おうかと思っていた時期もありました。ただ、収集癖にまかせると家が大変なことになるので、いまは仏舎利断捨離中ということで、集めないようにしています（意思表明です）。
昔、「健康を育成する会」というNPO団体と関わっていたことがあります。略すと「ケンセイカイ」になるのですが、名前の響きから「破邪顕正」と関係あるのかな？と思ったものの、多分違います。代表やメンバーが駒澤大学系の方々で、駒澤大学といえば曹洞宗＝禅宗です。
思い返せば、子どもの幼稚園も曹洞宗系で、園歌の歌詞にたしか◯◯さまというシンボル的な言葉が出てきて、「あれ？」と違和感を覚えたことがありました。今調べても歌詞はWeb上に見つからないのですが、「ああ、この小さな幼稚園ももとはお寺がベースだったのか」と気づいたものです。
ちなみに「破邪顕正」は一般語としても知られていますが、「顕正会」は日蓮系の団体です。そして、石原慎太郎が入っていたことで知られる「立正佼成会」も日蓮系。
「顕正」と「佼成」、字面は似ていませんが、なんとなく韻を踏んでいて響きが似ている気がします。韻の明確な定義は知りませんが、感覚的にはそう感じます。
私の散歩コースに「立正大学」のキャンパスがあり、学生さんがしずしずと歩いているのをよく見かけます。この「立正大学」という名前は、日蓮が当時の執権・北条頼時に送った『立正安国論』に由来するそうです。
その『立正安国論』の内容はざっくり言えば、「法華経以外の仏教――つまり念仏や禅をやっていると、国が滅ぶぞ」（四箇格言）というもの。日蓮宗は、曹洞宗（禅宗）を「禅天魔」などの言葉で批難しており、その背後には宗派間の対立がありました。
ここからが本題です。
『日蓮正宗入門』という本には、念仏宗（浄土宗）の開祖・法然が日蓮宗を批難していたと書かれているそうです。「念仏宗の開祖法然は、法華経を「捨てよ・閉じよ・閣け・抛て」といって、法華経に帰依することを否定しています。」もしこれが事実なら、互いにいがみ合っていたということになりますね。
ただ、念仏宗は「念仏を唱えること」を第一義としていただけで、別に法華経に直接言及しているわけではない、と解釈する人も多いようです。衆生の救済のために念仏を呼んだだけで、法華経云々したい人は「勝手にすれば？」というスタンスでそもそも（ほぼ）語っていないという感じなのかと。それをお互いにいがみ合っていたと表現すると、それだけで面倒な対立になりそう。言葉を選ばないと…。このあたりは意見が分かれるところで、踏み込みすぎるとややこしい。議論なんて野蛮なことはやめて、沈黙していればいい。「法然や親鸞は法華経を否定、誹謗していると聞きました。本当ですか？」みたいな疑問が湧いちゃうひとは、多分その手の本を呼んだせいです。……いや、なんならポプ子みたいに暴力でスマートに解決って手も「参考：議論なんてそんな野蛮な…ここは穏便に暴力で…」（ありえません）。
日本の教育機関には仏教系が多いですが、掘り返していくと宗派の対立史が顔を出してくるので、深入りはほどほどにしておいたほうがいいと思います。
というわけで、『日蓮正宗入門』を買うのはやめておいた、というだけの話です。宗教書は仏教、キリスト教を問わず読むだけで、洗脳されるとも言えるし、パワーを得られるとも言えます。
言葉は力だからです。理屈は力と言ってもいいかもしれません。最近、誰かがそんな事を言っていました。
話は逸れましたが…それでも、私立大学の宗派的な系譜くらいは、頭の片隅に入れておいたほうがいいかもしれません。
知らないでいるより知っていて回避できるいざこざもあるはずです。
実際、そのあたりの知識というか区別を気にしているおじさんは、けっこう多いとはいわぬまでもいます。…ここにいます。
・大正大学：天台宗
・駒澤大学：曹洞宗
・立正大学：日蓮宗
・龍谷大学・武蔵野大学：浄土真宗
探せばまだ多くの仏教系大学がありますが、「どの宗派の流れをくんでいるのか」という視点で眺めてみるのも興味深いものです。
仏教を背景に持つ大学の人々には、おだやかさと、世の移ろいを静かに受けとめるような無常観が、自然と漂っている気がします。
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