森永卓郎『投資依存症』を読んだ。内容としては、特に目新しい話はなかったが、字面だけを追っても理解できる構成で、気軽に読み進められる一冊だった。
この本は、後藤達也の『転換の時代を生き抜く投資の教科書』に対する「逆張り的な本」として著者が書いたという。つまり、投資を推奨する風潮に対し、「なんとなくNISA口座を開いて投資を始めたくなるのが最も危険である」というメッセージを込めたものだ。
印象に残った部分としては、『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』や『リーマンの地獄』など、外資系金融業界のリアルな金儲けの手法に関する話だ。これは刺激的で面白かった。また、バブルがどのように誘発されるのか、そして今が危険な局面と言えるのか、といったテーマも扱われており、全体としては「いつもの森永卓郎節」という印象。
個人的に特に面白いと思ったのは、REIT(不動産投資信託)に関する指摘だった。
REIT法人は、資産の約半分を銀行からの借入で賄っており、レバレッジ2倍で運用している。これはつまり、自己資本よりも多くの資金を借入によって調達し、不動産を保有・運用しているということになる。REITは「株よりも安全」と言われることもあるが、実際には金利上昇の影響を強く受ける金融商品だ。
金利が上昇すると、以下のような現象が起きる:
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長期金利が上がると、REITの利回りの相対的な魅力が薄れるため、投資資金が流出しやすくなる。
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調達金利が上昇すれば、借入コストが増え、配当原資が圧迫される。
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REITの株式が担保にされているケースもあり、市場不安時には真っ先に売られる対象になる。
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保有する不動産の一部は、需要と供給に影響されるが、それほど競争力のない商業施設なども含まれている。
たとえば、コロナ禍ではホテル系のREITが軒並みダメージを受け、その資産価値が急落した。現在も金利が上がりつつある中で、REITは不確実性の高い資産クラスだと言える。
私個人としては、「借金で不動産を運用する」というREITの構造上、インフレや不動産価格の変動以上に、金利変動リスクの方が大きいと感じている。金融機関は、必要に応じてREITを売却して資金を確保するため、金利上昇局面ではREIT価格が不安定になりやすい。金利が上がれば債務コストが増える。REITの価格変動は、株式と同程度か、それ以上に動くこともある。
REITはレバレッジ2倍の金融商品であり、そのリスクを十分理解したうえで投資するなら選択肢の一つにはなるだろう。ただし、投資初心者が「手軽に不動産に投資できる」といった宣伝文句だけで手を出すのは、危ういと感じる。
話は変わるが、S&P500がPER(株価収益率)で25倍程度と高水準にあることから、「バブルではないか」との指摘もある。しかし、バブルが崩壊するとして、それが何を意味するのか?どの程度下がるのか?が重要だ。
仮に10%程度の下落であれば、それは投資機会と捉えるべきだろう。トランプ政権時代の「トランプ・ショック」でも一時的に下落したが、すぐに持ち直した。20~30%の下落が頻繁に起これば問題だが、下落後に回復する傾向が続くならば、長期的にはリスクを抑えながら資産を増やせる可能性がある。
実際、過去十数年にわたって、米国株はそのようなパターンを繰り返してきた。たとえ成長が鈍化したとしても、そこに乗らない手はない、というのが私の考えだ。
利回りがインフレ率を上回り、年率3%での運用が複利で継続できれば、長期的な成果は大きい。
とはいえ、まずは最低限の生活資金をしっかり確保することが前提だと思っている。最近はそのための資金作りを進めているところだ。
一方で、今後の日本株への見方については慎重だ。人口減少や社会保険料の上昇といった構造的な問題を抱える中で、米国株に比べて日本株の魅力は相対的に乏しいと感じている。石破茂氏は「日本の財政はギリシャより悪い」と発言し、加藤勝信財務大臣もそれに同意。さらに、自民党幹事長の森山裕氏も「日本の国債の評価はぎりぎりだ」と語っている。
こうした背景を踏まえると、日本株に積極的に投資するには、相当なリスク覚悟が必要だと感じる。
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