『月の影 影の海』(下)を読んだ感想

徒然草2.0

ネタバレあり。

…なんか、やっとスタートに立った感じになってきた。いろいろと漢字とか間違えている気がするが…気にせずに書いておきます。

「十二国記」は結論から言ってしまえば…自らの浅ましさや卑しさや、他人と向き合うのに怠惰であったと自覚する陽子が、自らが異世界から来た女王だと自覚していくその姿に、きっと読者がシンクロナイズしていく…という人間個人の心理描写のところに十二国記の面白さがあるんだろう…ということが、ようやく明らかになってきた。

…ので、やっと少し自分の中でも盛り上がってきたところ。

ただ、なんだろうどっちかというと自分が男子だからか月の影の陽子よりも魔性の子の高里君のほうがこう感慨深いものがあり気になる。次はどうやら高里=泰麒=黒麒麟の話になるっぽい(違うかも)、ちょっと楽しみだ。あと、別にケチつけるつもりじゃないが、30周年で短編集を除くと10話…ちょっと少ない気がしてしまいます。追いつく方は楽でいいですが。

異世界・十二国においては、胎果と呼ばれる人の子どもが樹木に果実のように実る出生システムとか、麒麟が王を選んで王が麒麟を従えるという政治システムとか、もしこれがいきなり冒頭で語られるとどうでもよくなってくるが(そこらへんのラノベってそういうところあるよね)…そのシステムがある故に個人的な心理的作用やら感情やら政変が自然に起こりうるのだ…とう説明が自然とされていて、すーっと腑に落ちてくるので、そのへんはとても上手くできていると感じた。

項女王(漢字が違う気がする)が海客を嫌い、また延王が陽子を助くのも、そのへんのシステムゆえというわけではないのだが…そういうクダリもあった。蓬莱国(倭)からの来た海客のほうが異世界での統治に向いているというのはあるのかもしれないし、うまい具合に現実世界(蓬莱国)との関係が結ばれているというのも、ただのファンタージでは終わらないようにしっかり話が造られている感があって大変良い。だから、ファンタジー小説でもティーン向けでもないとか書評する人が言うのだろう。いずれにしても、海客は、その異世界・十二国記の仕組みに変に毒されておらず、自分の心と向き合うという姿勢を大切にする…ということなのかも。

自分も蝕に巻き込まれて慶国に流れ着かないかなあ。。。

まあこのへんの現実世界と十二国(記)と関連して展開される物語の根底にある話の筋であり、私達が自分であるために大切な内省的な取り組みというか、そうして自分と向き合って考えることが大切でそこに発見があるという意味では、大人向けの読み物ではなくティーン向けだということになるのだろうが…、それが返って大人だからこそ忘れていた自分と向き合う時間というものを呼び起こしてくれるところがあり、それはそれで古典を読むようでいて大変面白いし新鮮な気持ちにしてくれる。

話の筋で言うと…陽子は地球から慶国にたどり着くが巧国の人たちに疎外されながら、楽俊(ラクシュン)というネズミの青年(?)に出会い、国へとたどり着き延王に助けを請う。陽子は異世界生まれだが蝕という天災に巻き込まれ現代に生まれたようだが(景麒という麒麟が王と認めたために)慶国を納める女王となるために舞い戻った。王がおらず偽王が権力を握ろうとしている慶国は荒れていたが、囚われの身になっていた景麒を陽子が助けるまでに至る。

自分の痕跡を残さないために楽俊を殺してしまおうかと悩むシーンで陽子が血の道をとっていたら…三国志魏王曹操と同じことをすることになってしまう。曹操は自分を助けてくれた者を追ってと勘違いして家族もろとも暗殺してしまう。ついてきた陳宮が「曹操についてくるんじゃなかった」と嘆く。曹操は覇王ゆえか何処吹く風という態度だったが…そういう古典に出てくる覇王とは違う態度をとっているというところに妙味がある気がした。と言っても私の拙い知識では高が知れているが。

…付添人の楽俊と陽子の旅はベルセルクのガッツとパックぽい。よくある構成だとは思うが。個人的には青猿が気になった。陽子の猜疑心を表した幻影みたいなものなのかもしれないが…青猿との対話が面白いよね。

…あとは、自分で書いていてよくわからないのだが…タイホとキリンの2種類の称号みたいなのがあってわかりにくい。あと国名と王名の称号が違うのはなんでなのか?よく分かっていない(ので、適当だったりする)十二国の図を見ても自分が頭のなかで描いた地図になっていないというか。。。

エンキもケイキもパッキンのイケメンなので…いやイケメンかどうかという描写はないけど、そう乙女心的に勝手に思ったけど、コウキは女の子みたいだし、タイキは黒髪の男の子(というか海客の高里君)ってことで、別に関係ないのだろうか。

小説にされるとイメージできないから、絵を付けて欲しいなどと思うところがある(汗)読んでいくうちにもうちょっと知識が洗練されて人に説明できるレベルに昇華していく気がするが今は無理だ。。

徒然草2.0
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