貧しい集落だ。だが、なぜかどこの家でも明るい音楽が流れていて、大人たちはやけに生き生きしててとても友好的だ。けれどガキどもは退屈そうに死んだ目してやがる。そしてジジイ――頭がいかれてるのか?「生きてるうちにここを出ろ」ってわめいてた。大人連中は「孤独でおかしくなった可哀そうな爺さんだ、気にするな」と言ってたが、どう考えてもこの時代じゃ狂ってるほうが正常に見える。
大人たちは施錠レベル100の地下室に閉じこもって“仕事”してるらしいが……よく見りゃ、家はどれも暗い光が逆光になるように配置されてて、そのせいでみんな顔が妙に不気味に照らされている。最初は奇妙だけど平和な街だと思ったんだ。そう言ったのは、夕食をいただいた手前のお世辞ってわけでもない。……ただ、あれは何の肉だったんだろうな?バラモンじゃなさそうだが、コリコリして妙に美味かったぜ。
私は善良な市民(のつもり)だが、ロックピックの技術を磨きに磨いてレベル100。まっさきにアンデールの地下室へ。不法侵入するくらいは肯定されるはずだ。あいつらのカニバリズムの習性を暴きたかった。いや、暴かなくてもいい、むしろこの確信が嘘であってほしかった。だが現実は残酷で、そこには解体されて間もないウェイストランド人の死体が三つ、転がってた。
慌てて上の階に戻るが人気がない。外か?と勝手口に向かったところを、スミス夫妻の奥さんにナイフで襲われた。
「この人殺しの人でなしが!」
……え?どっちがだよ!!とツッコむ間もなく戦闘開始だ。
一つ救いがあるとすれば、あの正気を保ってたジジイが子どもたちを匿ってくれたことだろう。あの悪魔に魅了された大人たちの真実を、時が来るまで隠して育ててくれるそうだ。子どもが大人になった時、親の過ちを知り、悔い改める……のか?いや、どうだろうな。
それにしても、人間がどういう状況でカニバリズムに魅了されるのか。始めたら最後、やめられなくなるもんなのか?絶望が極まると、あれがある種の恍惚、依存性のある快楽になるのか。生まれた特性じゃなく集団がそれを“好む”ようになる。……悪魔と呼ぶ以外に説明がつかないな。考えるのを辞めよう。
で、すべてが終わったあとに気づいたんだが、このアンディールの地下室に押し入るためだけに、レベルアップ時のステ振りを全部ロックピックに注ぎ込んだのはアホだったな。普通に鍵をくすねりゃよかったんだ。もっとこの人でなしばかりの荒野をサバイブするために有効な向上させるべきステータスと身につけるべきスキルがあるのに、殺人集団の地下室に入るためにロックピックを最優先でスキルアップしていたなんて。俺も客観的に見れば「大概にしろ」って感じだな。
思えば、連中の秘密を知りたいって欲望自体、私自身が“殺人”に魅入られた証拠なのかもしれねぇ。そう考えると、ちょっとゾッとして身震いした。
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