『22世紀の民主主義』を読んでこれ以前に『22世紀の資本主義』があるからこっちから読まないといけなかったぽいと気づいて読んでみた(と、思っていたら事実関係は逆らしいがどっちでもいい)が、言っていることはさしてかわらずどちらのシステムもアルゴリズム化されてしまえばそれらは空気のようになり現在の意味を失うだろうというある種の未来予想である。というふうに私は読んだ。人によって感じ方や考え方はそれぞれだが、それを喚起してくれる思想書だ。もしくは変人成田悠輔の戯言だ。まあ、個人的には民主主義本のほうだけで十分だったなという気がする。
「お金は人類の恥部である。みんなお金が大好きだ。ネットや本屋で覗くと年収アップやら資産形成やFIREやらのゴミみたいな書籍や動画が溢れている。火を放おって焼き払いたくなるくらいに。暗号資産やNFTやら新しい資産も次々芽生えては滅びているらしい。億り人も家畜みたいに大量生産されている。」というわけでお金という、みんなが一番話したり、同時に一番話したがらない存在についてデータサイエンティストの著者が語る奇書である。
成田悠輔は「稼ぐより踊れ、競うより舞え」が解決策だと思っているらしいが、システムには必ずアウトサイドとインサイドがある。ある種の自由意志を持っていると錯覚した機械でしかない私たちが、アルゴリズムにより踊らされてて舞わされるだけで、それを実とするか虚とするかは本人次第みたいなもので、まあさほど現在も未来も、なにか変わったように見せて本質的には変わらないのではないかと個人的には思っている。所詮は人間の精神活動が機械により増幅されただけでその域を出ないのだ。
…というわけで、だいたいこの本については結論を含む戯言を述べた気がする。あとは戯言の戯言だ。
「未来がインフレし、現在がデフレしている」米国株式のPERは25倍を超えている。25年経過しないと利益が得られないものに私たちは投資している。株式投資をやっていて、ハイテク産業の株価ばかり上がっていく奇妙な感覚は私にもあり、もう少し中身のある企業のウェイトを大きくするアセットに切り替えようなんてことを私もしているが、あまりそれは進んでいなくてすべてハイテク産業でも良かったかなと思っている自分もいる。すべて株式市場の数値だけに弄ばれているだけだが、株に対して金がそれと対照的かというとそれはどうなんだろう?金も食べられなければ一部の産業で役立つだけで黄色いぴかぴか光る綺麗な柔らかくて重いだけの金属に過ぎないわけで価値があると思っている幻想で価値が成立しているのは株式や暗号資産とあまり変わらない側面もあると私は思っている。まだ不動産とか畑とか森林とかインフラ設備とかのほうが人間の生活に欠かせないものやそれらを証券化されたモノのほうが人間の契約の背後に実体ではあるが中身があると思っている。
「国の支配下にあるということは、すべての活動、すべての取引が記録され、登録され、計算され、課税され、許可され、計測され、番号がふられ、評価され、認可され、承認され、警告され、改革され、矯正され、罰されるということである」By プルードン …すごいなこの人、AI時代にも何の違和感もない。グローバリズムなんてもの(当時はそれをマルクス主義って呼んだんだけど)世界人類奴隷化計画のなにものでもないって言っている。私が無政府主義者だって言っているのはまさに22世紀の資本主義システムに組み込まれたくない存在でありたいからに他ならない。
結局、この人の言いたかったことが解ると、ほんの中身はとてもうすペラくてさらっと読み捨てられる。アートがどうこう言っているけど、泥団子とそう変わらなくね。
コメント