『白魔の檻』(山口未桜)感想(ネタバレあり)
「王道ミステリーだよ」すぐに読めると人に進められて、じゃあそれならばと読んでみた。最近あまりミステリーを読んでいないので、私の中の基準は『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』くらいしかわからないのだが。
正直、ミステリー要素そのものは個人的にはあまり刺さらなかった。それよりも、僻地医療をめぐるヒューマンドラマやドキュメンタリー的な部分のほうが印象に残った。「へぇ、大変だなあ」と関心を持てた。
全体として、誰かが明確に悪いわけでもなく、かといってみんなが救われた感じもあまりない。ほんの少し救いはあるけれど、基本的にはやるせなさが残る話であった。最近も秋田県でがん患者の手術が2ヶ月待ちだというニュースを目にした。ギリギリのところで今日も戦っている人がいるんだろうとすこし想いを馳せた。ただ話に関して、どこをどう切り取るかで解釈が変わりそうで、いろんな要素が混ざり合った物語だなと思った。
基本的には、全体の構成はとてもよく考えられていてバランスもいいし、読みやすさへの配慮も感じられる。前半はやや退屈ではあったが、でも後半に入ると「最後まで読まねば」という気分にさせられて、引き込まれた。硫化水素が迫る描写は、そこまで強い緊迫感はなかったものの、読んでいるこちらも息が詰まりそうな感覚にはなった。ただ読みやすさについては、少し微妙なところもあった。「今、誰が話しているんだっけ?」とか「なんでこの話をしているんだっけ?」と迷う場面があり、脳のワーキングメモリ不足気味な自分にはやや辛かった。難しい漢字にルビが振られていなかったり、意味のわからない単語が出てきたりするところでつまづいた。医療行為の描写は、ド素人でもすぐ理解できるのはよかったが、これでベストかと言われると個人的には少し疑問が残る、そんな小説だった。

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