ネタバレあり。
山本周五郎作品。つよく心が揺さぶられるような作品ばかり、というのは知っているのだが…。
わざわざ手にとって読んでみようという気にもならない。
別にdisる気はなく手放しで褒めている。
読んだ人はみんな同じ感情に行き着く目的で読んでいるのだと思っているが、それでいいのか?と読んでいるとときどき思ったりする。
…じゃあ読むな、という話ではあるんだけど…山本周五郎好きな誰かと熱く山本周五郎を語ってみたいと思うこともあったりする。
…とか言っているけど別に読んだ事はほぼない。
1作品も思い浮かばない。
たぶん、なにかのあらすじだけ読んでどういう読後感か理解している。
試しに朗読を聞いてみた↓
青空文庫にもある↓
都留(つる)は父の敵である老人(男)を快刀で刺し殺す機会を得るが、その男の生き方にふれてしまい殺せなくなる話だ。
序盤でだいたいオチは分かるが、素直に読めれば(というか普通は素直に読むものだろうが)最後まで美しい終わり方で、なんだかずるい。
おそらく老人は自分の告発文をもって奉行に裁かれるのだろう。
都留は、その男の背中に父の姿を見てしまった。
「同じ道だったのだ、父上が死んだのもこの方の生きたのも、結局は奉公という同じ道だったのだ」と書いてある。
しかし、彼を快く墓場へ送り出すことができるのだろうか?
「静閑を楽しむべき余生さえ無い」
ことを都留も男(主計…かずえ)も承知しているのだ。
…これって感動な話だけど、考えようによってはけっこう重くないですか?
父親より長生きしたのは確かだけど、結局は奉公して死ぬだけの人生。
いつの時代も辛いぜ仕事人は。
男の名前である主計(かずえ)と関連付けてもしかたがないが、ふと私の脳裏にあの事件が思い浮かぶ。
財務省佐川宣寿主計局長の指示で森友学園問題の改ざんを苦に亡くなった赤木俊夫さんの妻による損害賠償を求めた裁判の判決は敗訴した。
時の権力者に対する忖度を含め、改ざん命令があったのかどうか?ことの真実は不明だが、謝罪はおろか上司にあたる人の説明すら遺族にはされていないというのは、第三者からしても腑に落ちない。
私達が生きる現実にも、山本周五郎の晩秋のように、腑に落ちるオチがあるといいんですけどね。
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