男は思いつきで言った。
「そうだ、こんど博多に行こう。白くまを食べに九州に行こう!」
…スイーツを食べたいなんて、別に女子ウケするから言っているんじゃない。
俺は、ただ甘いものが食べたい。
まあでも、白くまを食べに行こうと言われて、嫌だと思う女の子もいないはずはない。
ちなみに、白くま発祥の地はWikipediaによれば鹿児島らしい。
福岡県久留米市に在る丸永製菓が、「九州名物」と銘打って「白くま」のアイスを販売しているものだから、
九州の食べ物だと思っていた…まあでも、そんなことはどうだっていい。
女は少し首をかしげた。
「いや、わたし”白くま”って気分じゃないの」
えっ…さらに、追い打ちをかける言葉を言い放つ女さん。
「豚骨ラーメン…」
ああ、そうだよな、俺も豚骨ラーメンは食べたいし、
「博多ラーメンも、もちろん食べたい」
女ははっきりと首を横に振った。
「ラーメンじゃないの、ラーメンの上に乗っている。黒いコリコリしているの。あれは何?あれが食べたい」
男は戸惑った…キクラゲ…なのか?
…あれってキクラゲでいいんだっけ???
まったく自信がない…間違えたメンツがない。
…というか、キクラゲだとして、一体なぜキクラゲなんだ?
なぜキクラゲが食べたいんだ???
白くまよりラーメンのトッピングが格上だとでも!?
おそらく日本一キクラゲを食べられてるラーメン屋!高円寺「ラーメン万福」の『キクラゲ定食』が美味すぎる!
むしろ、こういうところでキクラゲだけ食べておけばいいんではないか?
…夏になり、白くまを食べていると、そんな思い出を思い出す。
思い出は孤独を癒やす…というのは嘘。
それどころか、孤独に拍車を掛ける、記憶が思い出される。
白くまは黒いキクラゲに塗り替えられてしまった。
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