「もし日本経済が崩壊して、日本円の価値がなくなったら、何を持っていればいいのか?」
こういう話題になると、たいていは金・銀・プラチナといった貴金属の名前が挙がる。確かにそれらは世界共通で価値が認められているが、少額で始めようとすると意外と敷居が高い。購入時の手数料、保管の問題、売却ルートなどを考えると、日常的に扱う資産としてはやや重たい。
…そこで、もっと身近で、しかも制度と物質の両方の性質を持つものとして、5円玉と10円玉を集めるという考え方が成り立つのではないか、と思うようになった。
現在の日本円は、貨幣法に基づく法定通貨であり、その価値は国家の制度によって支えられている。しかし、もし将来、日本円が廃止され、別の通貨単位に切り替わるような事態が起きた場合、現在流通している硬貨はどうなるか。通常は一定の交換期間が設けられ、その期間を過ぎれば、旧円は法定通貨ではなくなる。つまり、貨幣法の対象から外れ、単なる「物」として扱われるようになる。
そのとき硬貨に残るのは、額面価値ではなく素材としての価値である。
5円玉は重さ3.75gで、材質は黄銅、つまり銅と亜鉛の合金だ。銅の含有率はおよそ6割とされており、1枚あたり約2.2〜2.3gの銅を含んでいる。現在、銅の価格は1gあたりおよそ2円前後で推移しているため、5円玉1枚に含まれる銅の価値は、すでに4円台後半から5円程度になる。額面とほぼ同水準まで来ている、ということになる。
10円玉はさらに分かりやすい。重さは4.5gで、その約95%が銅だ。含有される銅は約4.3gほどで、現在の相場で計算すると金属としての価値は9円前後になる。まだ額面には届いていないが、銅価格が上昇すれば逆転するのは時間の問題とも言える。
実際、銅はここ数年で大きく値上がりしており、エアコンの室外機や銅パイプが盗まれる事件が各地で起きている。理由は一つではないが、インフレ、電動化や再生可能エネルギーによる需要増、そして通貨価値の相対的な下落といった要因が重なっている。少なくとも、資本主義経済が続く限り、長期的にインフレ圧力がかかり続ける可能性は高い。
仮に円が別の通貨に切り替わり、5円玉や10円玉が法定通貨でなくなったとすれば、それらは単なる「穴のあいた平たい金属」になる。しかし同時に、重さと成分が公的に保証された金属片でもある。貨幣としての価値は失っても、銅や亜鉛としての価値が消えるわけではない。その時点では、1枚が5円以上の価値で評価される可能性も十分にある。
この投資(と呼んでいいかは微妙だが)の面白いところは、手軽さと流動性にある。5円玉や10円玉は、日常生活の中で自然に集まる。特別な口座も契約もいらない。家のどこかに大きな容器を置いて、そこに放り込んでいくだけでいい。
円が健在なうちは、そのまま支払いに使える。非常時でも、小額決済には対応できる。金や銀のように質屋や専門業者を通さなくても、市中で直接、食べ物や交通費に変えられるという点は、他の実物資産にはない強みだと思う。
なお欠点はある…重いし、かさばる。現在の価格で100万円分の銅を持とうとすれば、約500kgにもなる。部屋に置けない体積にはならないが、持ち運ぶ資産としては現実的ではない。また、リターンを期待するなら、株式などに投資した方が合理的な場合も多いだろう。
だからこれは、資産形成の主役というよりも、「制度が壊れたときにも、何かが残る」という保険的な発想に近い。大きなツボや貯金箱に5円玉や10円玉を投げ込んでおくのは気楽でいい。
それによって楽しい未来が訪れるかどうかは分からない。だが少なくとも、財布を圧迫する10円玉を貯金箱に移す行為が、単なる整理ではなく、ひとつの資産形成になるという点では、悪くない選択肢なのかもしれない。
そういえば4年前にメルカリで額面(1000円)で買った東京オリンピックの銀貨が4000円以上で取引されるようになっています。ある意味、株価よりも値上がりしたね。それ自体が価値を産まないという意味では積極的に持ちたくないし、この手のコモディティが値上がりするのは経済不安が高まっている証拠でもあるので良くない状況ではあるんだけど…ましてや、5円玉や10円玉を集める日本人が増加する未来なんてたぶんあまり良い世の中じゃないけど、数年先とはいわないが十数年後にたぶんそうなるのではないか?と思っています。

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