ぎゅるるるるるるるる「⋯ああ、お腹が痛い」
急な便意に襲われて坂道の脇にある公園のトイレに駆け込もうとした。
大きな桜の木がある公園で、桜の花もまばら、人もまばらだった。
ベンチにはサラリーマン風の男がひとり、小学3年生ぐらいの子どもが3人くらい遊具で遊んでいる。
あとは立ち話する老婆が2人ほどいたかな?
もう辺りは薄暗くなりはじめているのに今日に限って公園内の人は多いが、気にしている暇はない。
バタン!と大きな音がしてトイレのドアが閉じた。
気密性が低いトイレ内からは、外の音が丸聞こえだった⋯ということはトイレ内の音も外に丸聞こえである。
しかし、そんなことはかまっていられない。
パンツを黒い便意が突き抜けぬけそうだ。
トイレの鍵を閉めるより先に、ベルトを外して着座しようとした⋯がその時、
便座に黒い何かがへばり付いており、それがぶわっと何かが広がった(蠅が宙を舞ったのだ)。
公衆便所だ仕方がない。怯んでいる暇もない。
他人のソレを避け、ケツを浮かせたまま用をたそうとして屈んだ。
できる限り音を消そうとして、水洗トイレのレバーを落とす。カウントダウン、3,2,1(GO)!
ジャーと水が流れると同時に自分の腹からも黒い水が出た。
が、眼の前のドアに人の気配がした。
「しまった!」声が出そうになったが、時すでに遅くドアノブが回った。
あまりに急いでいたので、トイレに鍵をかけ忘れていた。
ケツを浮かせた体勢を維持するために、左手をトイレの壁にあて、
パンツが足首まで落ちないように支える右手の他に空いている手はなかった。
が、この状況を見られるわけにはいかない両手でドアノブを押さえて怒鳴る。
ガチャと回されそうになる強い力に対して「入ってます!!」と大声で叫んだが遅かった。
ドアノブを回す力は私の両手よりずっと強く外に引っ張り出された⋯
鍵をかけなかった私が悪いのは確かだが、そんな無慈悲な。
私の声は聞こえたはずだ⋯それなのに、なぜ?
前のめりになり、外へまろびでた私の身体は1回転して外を見上げた状態になった。
「あら、だいじょうぶ?」と老婆の声が聞こえたが、むしろ注目されたくない。
下半身もろ出しでジタバタしてみたが、こんな時に限って、さっきの一回転で痛めたのか。
腰が抜けて力が入らなかった。
あー、そうだ。変な人のふりをしよう。変な人ならしょうがない。もともと変な人だ。
誰も私に構わないはずだ。
「あーッ!!あーーッ!!」奇声を上げて、ジタバタする半裸の男を誰も見てくれるな!
ふいに腹部に熱いものを感じ、赤い何かがドロドロ出てきた。
うんこまみれに加えて血まみれだ。
誰がこんなひどいことを?「うーん⋯」おれは「こ」こで死ぬのか。
公園内の誰かが俺を殺したはずだが、一体誰が俺をこんな目にあわせたのだろう。
うんこを公衆にばら撒いて死ぬ。うんこな人生、ダイイングメッセージはうんこ。すべてが最悪だった。
トイレの裏にサラリーマン風の男と女児がいて、なぜかその女児は私と同じように下半身を露出していた。
一体、何んだったのか⋯?
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