いつ解約しても元本割れしない貯蓄型生命保険は使えるのか?
「貯蓄型保険は元本割れのリスクがある」とか「途中解約すると損をする」といった話題は、金融リテラシーに関する議論でよく耳にする言葉です。正直なところ以前の私は「情弱向けの金融商品」だと少し否定的に考えていました。
たしかに、貯蓄型保険は株式投資と比べるとリターンが小さく、投資効率が劣るのは事実です。しかし最近では、途中解約しても元本割れしないタイプの貯蓄型保険が登場しており、その印象が変わってきました。
金融資産の多くを株式で保有していると、市場の急変で大きな損失を被るリスクもあります。そのため、生活費やライフイベントに備えて「すぐに使えるお金」を確保することも重要です。多くの人は投資への積極派も慎重派も資金の多くを普通預金や定期預金に置いていると思いますが、毎月安定した収入(給与など)がある人ならば、数カ月分の生活費があれば十分と考えられます。そうなると、数百万円もの現金を利息のつかない口座で寝かせておくのは、やや非効率です。
このような資金の置き場所として、「元本保証に近く、かつ安全性の高い」貯蓄型保険が使えるのではないか――そう思って調べてみることにしました。
また、貯蓄型保険は生命保険料控除の対象になるため、税制上のメリットもあります。加えて、現金と違って保険会社によって一定の運用がされるため、全額を自分で管理しなくて済むという安心感もあります。もちろんリスクゼロではありませんが、相対的に見れば非常に安全性が高い部類の商品だといえるでしょう。
私自身、「現金は増えないから極力持ちたくない」と考えるタイプなので、こうした保険商品は自分に合っているかもしれない、と感じました。
とはいえ、「ノーリスク」をうたう金融商品には慎重になるべきです。本当にリスクがないのか、どこに注意すべきなのかを見極めるため、さらに詳しく調べてみることにしました。
例えば、住友生命の「Chakin」は若年層から人気があり、日経新聞でも紹介されていました。ですが、他社の類似商品を見ると、多くは短期解約時に元本割れする設計になっているようです。
そうなると、資金の流動性(いつでも引き出せるかどうか)が損なわれてしまいます。そこで私は、「短期解約でも元本割れしない生命保険」に限定して調査を進めました。
調べたところ、該当するのは**「無配当災害補付積立保険」**という種類の保険商品であることがわかりました。現時点では、該当する商品は非常に限られており、私が確認できたのは以下の3つだけです。
保険会社名 | 貯蓄型保険名 |
住友生命 | Chakin |
明治安田生命 | 自分の積立 |
日本生命 | ちょこつみ |
「支払いから3年ほど我慢すれば元本割れしない貯蓄型生命保険は、実はかなりの数があるようです。しかし、途中解約しても元本割れしない商品となると、私が調べた限りでは、この3つだけでした。
保障内容にはあまり興味がない(!)ので、詳しい比較はしていません(死亡保障を重視したいなら、普通の生命保険を選ぶべきだと思っています)。ですが、この2つは基本的に同じような内容で、**10年間でおよそ106%**の返戻率になるようです。わずかですが、住友生命の方が途中解約時の返戻金に「お気持ち程度」の利息がつきやすい印象です。
一方で「ちょこつみ」は、他の保険商品と比べて利息がやや控えめですが、クレジットカードによる積立に対応している点が特徴的です。ポイント還元を重視する人には、こちらの方が向いているかもしれません。
──いずれにしても、自分のライフスタイルや価値観に合った商品を選ぶのが一番ではないでしょうか。
ちなみに、同じような貯蓄型保険としてよく名前が挙がるのは、かんぽ生命(ゆうちょ)の養老保険、日本生命の「ニッセイみらいのカタチ」、第一生命の終身保険などですが、これらは基本的に短期解約すると元本割れするようです。
また、少し気になったのが、「がめつい」と言われがちな外資系保険会社がこの手の“安全寄り”の金融商品を出していないことです。また、資産規模が大手よりも小さい保険会社も手を出していません。これは、逆に言えば「もうけにならない」からなのかもしれません。実際のところどうなのか、そのあたりも少し興味があります。
貯蓄型保険のメリット
すでに序分でも述べましたが、貯蓄型保険のメリットを書いておきます。
いつ解約しても元本割れしない
この他にも、
生命保険の控除が受けられる
ので、すでにめいいっぱい控除を受けている人にメリットはないが、生命保険を解約してしまった私にはメリットが大きいでしょう。
また保健機能としては弱いものの、
災害や死亡の保障が受けられる
⋯ので、リスクを和らげるお守り代わりになるでしょう。
貯蓄型保険のデメリット
契約と解約の手続きが手間である
登録や解約時の手続きが面倒なのは、最大のデメリットかもしれません(汗)。中には面談が必須になっている場合もあり、その際に別の保険商品を営業される可能性もあります(※LPには「営業は行わない」と記載されていますが、完全にゼロとは言い切れないでしょう)。
いずれにしても、「大きく儲かるわけではない」のに、手続きの手間や労力がかかるという点は確かなデメリットと言えます。もしリターンが大きければ、その手間も“投資コスト”として許容できるのですが、利益が小さい行為に手間をかけるのは、費用対効果が合いません。
保険とはいえ、本質的には金融商品です。であれば、リスクはできる限り抑えつつ、効率よく利益を最大化するという視点で選ぶべきだと思います。そう考えると、手続きの煩雑さは無視できないデメリットとして捉えるべきでしょう。
生命保険会社が倒産したら90%しか戻ってこない
まずないとは思いますが、生命保険会社が倒産した場合は生命保険契約者保護機構という組織が責任準備金(保険金、返戻金)の90%を保証してくれるそうです。
ただし、契約の種類によっては補償の対象外になったり、条件付きの保護となることもあります。たとえば、外貨建て保険や高利率契約などは減額や条件付き補償の対象となる場合があります。
このように、万が一の事態にもある程度のセーフティネットはありますが、契約内容や保険会社の経営状態により補償内容が変わる可能性があるため、契約前には生命保険契約者保護機構の制度概要も確認しておくと安心ですね。
まとめ
すぐに使う予定のないお金が普通預金や定期預金にあり、契約と解約の手続きの面倒くささや生命保険会社の倒産リスクなどに目をつぶれるのならば、元本割れしない貯蓄型の生命保険に入るのはありなのかもしれません。
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