「インドール」と「スカトール」という物質がある。どちらも大便の臭いを構成する代表的な成分であり、濃度が高いときは強烈に不快な臭いを放つ。
…ところが、これを極めて微量に薄めると、むしろ甘く、花のように心地よい香りへと変化するというから驚きだ。
たとえば、インドールはジャスミンやガーデニア(くちなし)、チューベローズ(夜来香)など「白い花」の香水に使われることが多い。一方、スカトールはやや動物的で温かみのある香りを与えるため、ムスク系やアンバー系の香水にブレンドされることがある。
つまり、ジャスミンの香りを好むということは、極限まで薄めた“うんちの匂い”を心地よいと感じている、とも言える。柔軟剤の香りが「きつい」と感じるとき、それは香料中のインドールやスカトールが強く主張しているのかもしれない。
また、高齢者の多いスーパーマーケットなどで独特のにおいを感じるのは、体臭だけでなく、香料成分に対する嗅覚の過敏さも関係している可能性がある。
さっき、知人の子どもが「スーパーは💩臭いから行きたくない」と言うので、柔軟剤に入ってる香料が高濃度になると大便💩と同じ香りになるんですよと子どものお母さんに説明したら、
「やっぱり大便の匂いは合ってたんだ!スッキリした!」と、
理由がはっきりして、便が出たのように喜んでたw— ふぐ🐡 (@kurukku12) August 27, 2025
スカトロ的な趣味がある人というのは、あれやこれを臭気ではなく芳香と感じているということなのかもしれない。ギリシャ語で糞のことをスコールといい、科学物質として糞の臭いということでスカトールと命名されている。ただ、これが好きだということに他ならないので、何かしらの偏見を持つべきではないのだろう。
…興味深いことに、「不快な匂いの成分を少量混ぜることで香りが深まる」というのは香水の世界ではよくある手法らしい。
たとえば、
・シベット(ジャコウネコの分泌物)
・カストリウム(ビーバーの香嚢)
・アンバーグリス(マッコウクジラの腸内結石)
これらも単体では獣臭く強烈だが、ごく少量加えることで香水に温かみや官能性を与える重要な素材とされている。
ちなみに、現代のバラの香料も天然バラから抽出するのではなく、インドールやスカトールを化学的に組み合わせて再現することで低コスト化が進んでいる。
純粋なインドールを入手するのは難しいが、海外では1〜10%程度に希釈された香料用インドールを販売している場合もある。
もちろん、扱いには十分な注意が必要だ(強い臭気があり、密封環境が必須になる)。
結局のところ、「臭い」と「香り」の違いは、濃度と文脈に過ぎないのかもしれない。
わずかな「うんこ臭さ」も、うまく調整すれば花のようにエキゾチックな魅力へと変わる――そんな逆説を知ると、香水の世界がぐっと面白く見えてくる。
そんなわけで、バラの香りについて、ご飯を食べながら話をしよう。

コメント