戯言。銀河英雄伝説 Die Neue These – アスターテ海戦とヤン・ウェンリー「頭をかいて誤魔化すさ」ってよく考えたら回答やばくね？

銀河英雄伝説 Die Neue Theseをアマプラで見ています。世間では大変不評のようです。腐女子向けのせいか顔の判別がつかない（涙）まあでもストーリーは変わらないですから、見ていられるレベルだと割り切って視聴しているところです。

…個人的には音楽があまりよくない気がします。

危機的な画面で不協和音のピアノを鳴らすの不要です。

うるさいだけです。

さて、第二話アスターテ会戦について。

銀河帝国ラインハルトに第四艦隊と第六艦隊を各個撃破されてしまい、後が無い自由惑星同盟の第二艦隊は司令官パエッタ中将の戦士によって、ヤン・ウェンリー准将が指揮権を得ることになる。この戦いはヤンの奇策によってラインハルトを一度追い返すことに成功するわけだが…運命をかけた戦いの前に後輩のアッテンボローに「味方が思い通りに動かなかったら？」と聞かれたヤンは「頭をかいてごまかすさ」と解答。これについては考えさせられる。

いわずもがな、味方が思い通りに動かぬ場合、帝国軍に各個撃破され第二艦隊は第四艦隊や第六艦隊と同様に激しく壊滅するだろう。頭をかいてごまかす以前に多くが死亡してしまう可能性も極めて高い（各個撃破された艦隊のうち生存できる人は１，２割がせいぜいだろう）ひいてはイゼルローン要塞から自由惑星同盟領へ侵入を許すことに繋がり、自由惑星同盟の滅亡のきっかけを作らせない重要な戦いだ。それは流石に「頭をかいてごまかす」では済まされません（汗）まあ、あくまで指揮権が委譲された身で上司の尻拭いをさせられているだけという考慮ぐらいは評定の時にしてくれるのかもしれませんが。。。戦いはヤンの思惑通り、第二艦隊は旋回した後、ラインハルトの艦隊を追うよう２匹の蛇が回転するかのごとし、みっともない消耗戦へ移行する。お互いの軍を退かざるを得ない膠着状態になったから良かったものの…失敗していたら後が無い戦いにも関わらず失敗したら「頭をかいてごまかす」てへぺろな有様。一歩間違えばふざけたやつだけど、まあ別に怒ったところで結果は変わらんということもまた事実。…であれば、このように楽観的な態度でいるほうが正解なのかもしれません。いずれにしても、ヤンほど肝が座った男はいない。ふつう楽観的に振る舞うとしても、緊張感を解きほぐすためで、素でこんな態度とれない。というわけで、たった１つの奇策以外に打つ手なしの状況にして、このセリフを言えるかどうか？窮地において人の本性が出るというから、同じ余裕をかますなんて自分には無理かもしれないが、この態度はすごい。死線を超えている最中にあってこの心境。

同様に「かかっているのはたかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べれば大した価値のあるものじゃない。」という彼の名言も、私たちは国家や組織のために戦っていると思い込まされているものだが、そういった固定観念を一度ぶち壊して肩透かしを食らったような気持ちにさせてくれる。ヤンの政治的思想が透けて見えるセリフであるが、ただこれは安全地帯にいる人が言えない言葉でもあると思う。例えば、自由惑星同盟国家元首ヨブ・トリューニヒトがひとり自室にいる時につぶやいたら、ただのエゴイストにしか見えないだろう。ヤンは、避けられない戦いに身を投じる兵士たちに対して、”わたしたちはあくまで個人として最善を尽くすのだ”という意志を示している。自由のために死ねと言ったら愛の押し付けであるが、個人として最後は死ぬのだとするなら、同じ状況でもまるで意味が違ってくる。これを逆説というか言葉のレトリックと言ってしまえばそれまでな気もする。というのは自由意志を尊重することの価値を国家より上位に据え付けるので、共感しなかったものもいたかもしれない。解釈が難しいのだがヤンに至っては「私は最悪の民主政治でも最良の専制政治にまさると思っている」わけで、「個人＞自由民主＞帝国主義」の等式はいかなるときも崩れない。そのことをまったく疑っていない。突き詰めると”そんな人はおんの？”という理想人間ではあるが…私がまだこうしてあーでもないこうでもないと言っているうちは、己の自由意志を尊重して責任を全うする覚悟がないということなのだろうな。。