戯言。刑務所に入りたい。

徒然草2.0

むかし親に「刑務所に入りたい」ことを告げたところ、怒られたことがある。

まあ、親として自然な反応だろう。

なぜ、ふとそんなことを思ったのか正確には覚えていないのだが、テレビで刑務所の様子かなにか映っていて規則正しく建物の仲で生活している様子が、なんだか心地よさそう悪く言えば生きるのが楽そうに思えたのだと思う。

現実逃避をして刑務所の中に入っても大変だという側面はあるが、その頃の感覚はわりと間違っていないのだろう、と今でも思っている。

塙保己一の『刑務所の中』の内容は元ライブドアの堀江貴文氏も事実だと言っている。刑務所の中にいる心地よさは「人による」と言ってしまえばそれまでだが、出所してもまた刑務所に戻りたいという理由で再犯する人も一定数いる。

刑務所の中では同じ囚人内にもいじめがあり、看守と課せられる規則が絶対的な権力になる。人間関係のしんどさは残る。もっとも最悪なのは看守にいじめられることだが、現代の日本の刑務所でそれが問題になることは、ほとんどないと思われる。そういう話は聞かない。8時間労働の3食付で10時間睡眠の規則正しい生活を送ることができる。睡眠時間を削って残業や休日出勤に勤しむよりも何倍もマシだ。

もし制約があるとすると、好きな時に好きな場所、お芝居や書籍を楽しむ、誰かに会う、好きなものを食べる、シャワーを浴びたりとかが自由にできないことだが、まあそれは今も別に好き勝手やっていない。最近は見たい映画も書籍もがまんができるというか無きゃ無いでいい気がする。欲が減ってきたのかも。目をつぶって何もしない時間の方が貴重。別に行きたい場所も会いたい誰かもいない。建物の中が息苦しいと感じた時に散歩に出るという「ちょっとした息抜きをする自由」が奪われるのがもっとも恐ろしい気がするが、不自由さについての懸念事項それくらいだ。

不自由さのデメリットよりも、必要な睡眠が7時間としても3時間ごろごろしていられるというメリットのほうが大きい気がしてくる。裏を返せば刑務所の最大のメリットは、外界の出来事から完全にシャットアウトされること。刑務所の壁は人を閉じ込めておくものではなく、外界から身を守るバリアではないか。ウォール・マリアのに囲われて永遠にぬくぬくしていたいと思うのが弱い人間の姿である。

横浜の港南区にある刑務所の壁の脇をてくてく歩いていた時(柔道の審査場があるので中学生の時にたまに行っていた)、この中に閉じこもっているほうが今よりずっとマシだと思っていたのは、たぶん間違っていない。どうやって脱出するか?とかも考えていたが、仲間がいないと無理だろう。入ることも考えながら出ることも考えている。我ながらあたまがおかしい気がする。

世間でまじめに「刑務所に入りたい」なんて言ってみても「じゃあ入ればいいんじゃね?」と心無い人に言われるだけである。「そうか。いつか刑務所に入る夢が叶うといいね!」とニコニコ言われたら逆に怖い。刑務所に入るなら社会的な罪を犯し、刑罰として刑務所に入らねばならないが、まっとうな人であるふりをする選択をしているせいで、その機会は未だに訪れない。政治運動などの自分が正当だと理由で逮捕されたら自分が納得できると思うんだけど。

でも本当はただ手元にお金があって、時間が自由に使うことができれば、刑務所以上に現実は快適になることは間違いないのだけど、それがちょっと難しいと思えてくると…務所もいいかもね?とならないだろうか。

眼の前の現実 < 刑務所 < 経済的自由

右へ行くほど理想な状態に近づく。

経済的な自由が難しいなら現在よりも刑務所の方が今よりいいかな?

そういえば、私と同じように理由を並べて「刑務所に入りたい」って力説していたやつがいた。誰かは分からないけど、ただ現実逃避したい人の普遍的な願望なのかもしれない。ただその反面、そんなことを言うやつは怠惰でバカっぽいとも思った。でも、そんな人が増えてくれば結果的に犯罪が増える。そんな人間は単純じゃない?単純だと思うけど。

人は罪深く愚かである。キリストの到来を信じれば救われる?違う違う。魂を牢獄に閉じこめると同時に、精神も牢獄に閉じ込めたほうがマシ。そんな精神を発揮するだけ無駄。罪がある人間は罰を受けなければならない。

人が考えうる刑罰のうち穏やかかつ効果的なのは牢獄に入れてしまうこと。例えば、ムチで叩く罰は一見厳しいように感じるが、人は矯正されうるという信仰があるだけ甘いし結果的に効果はない。基本は終身刑、希望は無期懲役。

私は別に厭世的になりたいわけじゃない。ただ楽観的であることも疲れるので、精神がどっかに青い鳥さがすよりも、温度が一定に保たれた丈夫な水槽の中で泳いでいたほうが心地よいに決まっているという、ごくごく当たり前な話をしている。

「刑務所に入りたいと力説することは、どこまで行こうがバカはバカ」(心の声)

徒然草2.0
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