ネタバレあり。
前知識なしに仮面ライダーBLACKを見ている。
可も不可もない。悪くはないが別に面白いというほどでもない。こどもの頃におもちゃ箱に仮面ライダーRXの人形があった。母か祖母に買ってもらったが当時は仮面ライダーを理解していなかった。RXの原点はBlackにあるのでBlack->RXの順に見ようと思う。
Blackの最初の話は悪い怪人たちと戦うという設定だった気がするが、6話あたりからは暗黒結社ゴルゴムの白い頭巾と怪人たちが、人の妬みや奢り及び射幸心やらを手玉にとり、人間同士を争わせて滅ぼす戦略をとるようになる。省力化?自分たちの手は汚さず勝手に人類を滅ぼそうとする。…人類の敵がゴルゴムというよりは、人間の浅ましさにより人間が対立することがテーマなので、話が味わい深くなっていく。結局のところ人間の敵は人間なのかもしれない。
例えば、9話「悪魔のトリル」では、バイオリンひきの少女がオーディションに落ちてしまい、セミ怪人に自分の意志で力を貸してしまう。
「あなたの才能はずば抜けていたわ。それなのに(オーディションに)なぜ落ちたと思う?お金、お金の力。優勝者の父親は大学に多額の寄付をしているの。楽器は数千万円のストラディバリウス。自費でいくらでも留学できるお金持ちなのに、オーディション合格の名誉が欲しくてあなたの才能を踏みにじったのよ。悔しくはない?」
音楽を信じていた少女がこうも残酷な現実を突きつけられたら、ゴルゴムに加担したくもなるだろう。このセリフだけでストーリーの方向性がよく分かる。嗚呼、汚い人間社会。セミ怪人じたいはミンミン言って、怪電波で人を操るだけで戦闘力はあまり強くなく、話の軸は人間の汚い心にこそあるということだ。
90年代はその手の社会の裏話を反映したものが多いのか。いやはや人間の社会に平等も公平もないと子どもながらによくわかった気になる。この世にあるのはただ金と薄汚れた人間の心じゃないか、と思ってしまう。生きていることそのものが白けてしまう。汚い大人になりたくない、みたいな。そういう時代的な感覚を思い出させてくれる。
利益ばかりを追求する日本の企業を批判する話もあったが、仮面ライダーBlackが製作された当時から30年近くも経ち、現在の日本経済は衰退していてまったく笑えないが、たかが経済に過ぎないと笑い飛ばす感性は流石かもしれない。
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