私のアイデンティティは◯◯です。
…みたいなタイトルで高校だっけ?短い作文を書けと国語の教師に言われたが、作文が得意というかネタには基本的に困らないと思っている私でも、一体何を書いたらいいのかわからなかったことがある。
…そしたらギャル風の勉強が得意じゃなさそうな女の子がすらすらと何かを書き上げて、横にいた女友達に向かって読み上げていた。
「私のアイデンティティはトイプードルを飼っていることです」なんじゃそりゃ?と思ったが、しかし先生がアイデンティティは自分らしさや存在意義のことだみたいなことを言ったからだが、その文脈に従えば確かに、トイプードルのお世話のために存在しているというのは間違っていない気がする。
教室全体が「そんなんでいいのか?」という空気になり「私のアイデンティティはバイトでお金を稼いで好きな化粧品を買うこと」だとか「部活で野球をすることだ」だとか「ゲームで遊ぶことだ」とか「彼氏と恋愛するため」と書く人が出てきて、いやアイデンティティってそういうものじゃなくね?と思った私は、作文を書き出せずかといって教室にただよう空気に対して間違いを指摘して水を差す気持ちもなかった。
…で、突き詰めた結果でた結論は「アイデンティティ、そんなものは存在しないです」てことを書いたら、バツ印がついて戻ってきた。アイデンティティがないという主張はなぜか許されなかった。この国語の先生はバカだな。「ころもほすてふ」を「ころもほすちょう」ではなくそのまま「ころもほすてふ」って読んでいた時から信用できない国語の先生だと思っていたが(もしかしたら、違う先生かもしれない。私もいい加減だ)
特定の事物があるわけでもあるまいし、「ない」という主張もありではないか。アイデンティティそんなものはないという主張をする人が、私以外にいないわけでもない。
とはいえ国語の点がもらえないのは、下手すりゃ高校を辞めなければならないわけだが、そこまで私はバカじゃないというかアイデンティティの無さを貫く信念がないので、「アイデンティティなんてものはないが強いて言えば」と前置きをすることで先生が望む解答をでっちあげて、つまりデタラメを書いて世間的に認められる作文にして再提出した。
トイプードルを飼っている女の子は1回の提出で丸を貰えたこの理不尽さ、一体どう解せばいいのか。
…そうだなぁ、アイデンティティなんてものは今も私にはないままだし、アイデンティティでっちあげだと思うが、強いて言えば、世間の当たり前を呪って否定することかもしれない。
世間のためとか自分のためとか嘯(うそぶ)きながら何ごとか考えているだけで、何の生産性もないけどな。
コロナ感染症が広がり「不要不急の外出はお控え下さい」とマスメディアでは言われているが、人間が本来は不要不急ではないか?と養老孟司が『ヒトの壁』で述べているのを読んだ。ふと、そのとおりだなと思った。
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