適菜収の『はじめてのニーチェ』が読みやすくて面白かった。
色々な哲学者に対してのアンチテーゼを唱えるニーチェ像が浮き彫りになる感じだ。
この混迷の時代に私たちはニーチェを読まねばならぬ、そして考えねばならない。
ニーチェ「私の物語るのは、次の二世紀の歴史である」(権力の意思)
ニーチェ「この未来はすでに百の徴候のうちにあらわれており、この運命はいたるところでおのれを告示している」(権力の意思)
※このようにニーチェは2世紀にわたる混迷の時代を預言していた。あ、神は死んだといった男を神から預言をあずかった者だなんて言ったら、新たにニーチェキリスト教が生まれてしまうような(汗)
そういえば、ルーテル教会へ通う人にルターの話を聞いて批判的なキリスト教って面白いと思ってニーチェはどうルターを評価しているのだろうか?
ついでに言えば名前が似ているが異なる思想を持つルソーについてニーチェはどう思っていたんだろう?と常々疑問に思っていたのだがこの本に簡潔にまとめられていた。パウロやマルクスやカントやプラトンなんかへの批判もなかなか辛辣である。
ルソーについて
ニーチェ「彼(ルソー)は、社会と文明に呪詛を投げつけうるために、神を必要としたのだ」(権力の意思)
ニーチェ「キリスト教的道徳理想の礼拝のより棄権な諸形式(中略)ーーあたかも『自然』自由、善意、無垢、公平、公正、牧歌ででもあるかのようなルソー的自然概念は、根本においてつねにキリスト教的道徳の礼拝である」(権力の意思)
※私は自然がとても好きであるが、同時にこいつは極めて危険なものだということを、ルソーによって忘れてしまうことがある。
ルターについて
ルターはカトリックやユダヤ教を痛烈に批判した人で、ある意味でキリスト教を罵倒した過激なニーチェと立場は似ていないだろうか?
と思ったがニーチェはルターを批判をしているそうだ。
ニーチェ「ルター、この宿命の修道僧は教会を、いやそれよりも千倍もまずいことに、キリスト教を、それが倒れたその瞬間に再興したのだ…キリスト教、この宗教になった生への意思の否定!…ルター、このとんでもない修道僧はそのとんでもなさを根拠にして教会を総攻撃し、そして、ーーその結果!ーー教会を再興した」
…というわけで改革をした人でもダメらしい。ルターはニーチェとある意味で同じ穴の貉な気がするんだけどな。
「愛をとりもどせ!」クリスタルキング…じゃあないけど生の意思をとりもどせー!って同じことを言っているんだから。
ナチスについて
ニーチェがナチスと関連つけられる理由としては、妹のエリザベートとその夫がバリバリのルター信者=プロテスタントだから。またバチカン(=カトリック)も教皇がヒトラーの誕生日に祝辞を送っておりナチスに加担している。
…がニーチェに至っては、ナチスを指示していたことはない。
※まあ、ふつうに考えてないよな。ナチス支持者というか体制支持者として有名なのは、ハイデガーぐらいでは。あとナポレオンを讃えたヘーゲルとか。
まとめ
哲学垢をいっぱいフォローしているとニーチェが讃えられるというか持ち上げられる一方で、プラトンやアリストテレスやカントを褒めそやす言質もとれるけど、これらを「矛盾」したものとしてどう読み手は消化しているんだろう??
プラトンとアリストテレスがいたから映画マトリックスが生まれて価値有るものがつくられたとかすごい違和感あることを言っていた垢に食って掛かりたくなったこの頃です。
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