悪夢|日銀・植田総裁が広告塔のネットワークビジネスを始めたんだ。

徒然草2.0

仕事の合間、くたびれてホテルの休憩室で横になっていた。

休憩室ではマッサージを受けていて、その流れで「体にいい水です」と女性に勧められて、よく分からないまま飲んだ。無味無臭だが、どこかとろりとした舌触りのある、不思議な水だった。

すると、隣の部屋が急にどっと盛り上がった。どうやら立食パーティが行われているらしく、壇上には日銀の植田総裁が立っていた。

「会場で、何か質問はありますか?」

その様子を眺めているうちに、ふと疑問が湧いた。寝ぼけていたんだと思う。恐怖とか恥ずかしいという気持ちがなく自然に手を上げたところ指名された。

「これ以上円安が進んだら、日本は本当にまずいんじゃないか?」そんなことを口にした。

どうやらそれは、「みんなが言いたいけど言えないこと」だったらしい。日銀の植田総裁はなにかもっともらしいことを丁寧に解説してくれた。

会場では「そうきたか!」という空気が一瞬走り、脇から実業家風の人たちがわらわらと出てきて、「なかなかのスピーチだ」「君は素晴らしい」と次々に褒められた。少しだけ、気分が良くなった。

その間に、植田総裁はいつのまにか姿を消していた。代わりに、「もっとこういう話し方をしたほうがいい」「3月にコンベンションがあるから、ぜひ来なさい」とアドバイスを受けた。周りの人は親切で食事をしながらあれこれ話をした。

例のサプリメントを溶かした水のような“何か”を摂ると、ものすごく元気が出るらしい。「さっき休憩室で飲ませたでしょう。もう効果は体験しているはずですよ」にこにこした、あの女性がそう言った。「この感動を他の人に伝えていくだけで、健康も富も手に入るんです」

たしかに、気分はいい。断る理由が見当たらなかった。日銀総裁がネットワークビジネスをやっている。そんな馬鹿な、と思いながらも、国債を借り換え、返す必要のない現金が生まれ、自分の手元に転がり込む、という話を聞いていると、妙に筋が通っている気もしてくる。

総統級の詐欺師だな、と頭のどこかでは思っている。騙されている自覚も、たしかにある。それでも嫌な気持ちはなく、「このまま進むしかない」という使命感だけが残った。

休憩室で会った女性と連絡先を交換し、ホテルを出た。これから仕事に戻るのが、急にばかばかしく思えた。俺には、日銀の植田総裁からもらった“奇跡の水”があるんだ。

そう思った瞬間、日本の未来にかすかな希望が見えた気がした。同時に、このままで本当にいいのだろうか、という暗澹たる不安が押し寄せてきて、胸がざわついた。

妙に心地よくて、妙に怖い。そんな、奇妙な気分だけが、夢のあとに残っていた。

徒然草2.0
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