ネタバレあり。
なんとなく面白い異世界転生モノをある人に聞いたところ、
「十二国記」が絶対オススメ的なことを言われたので、近頃は小説ものはあまり読まないのですが…それとなく読んでいます。
図書館で借りてきて、400pを超えるのを知ったときは”無理”と思いましたが、意外にすんなりいけました。
内容は…なんというかあまり変化のない話で…ちょっと途中は少し辛かった(汗)が、最後の方はだんだん面白い感じになったかな?最後まで読んで良かったと思う。
主な登場人物は…
高里(たかさと)。高校生男子。13歳の時に神隠しに遭い。それ以来、彼を傷つける人に祟りが起る守護霊的なものに取り憑かれている?
広瀬。教生(教師見習い)。学校をはじめとして、この世に居場所を感じていない若者で、自分とは似て異なる高里に興味を持つ。
後藤。広瀬の恩師。ちょっと変わった、理科の先生。
あらすじは…
高里の周りで起る祟りで高里を傷つける生徒達がどんどん傷ついたり死んでいく。はじめから最後までそんな話が続くだけ。
ホラーやファンタジーの部分はわりとどうでもよくて、広瀬を中心とした心理描写の部分にリアリティがあるなあと思った。
広瀬は、この世の存在(モノ)とは思えない不思議な高里少年に、親近感を覚える。
そして、彼を身を張って守ろうとするが、それが高里のためというよりは、自分と同類の彼を守ろうとするエゴなのかもしれない、ということに後藤の言葉によって気がついてしまう。
…そんなちょっとした葛藤についての描画が、とても分かりやすいし読者としては共感こそを覚えたりした。
例えば、後藤教諭が高里の保護にのめり込む広瀬教生に言った言葉…
後藤「お前の夢なんか、いくらでも否定してやらぁ。単なる夢だという証明もできんが、お前だって夢でないという証明はできんだろう。お前と高里が違うのはそこだよ。高里に引きづられるな。同情するのはいいが、同胞なんて甘い夢を見るな」
後藤「高里の甘い夢は否定し切れない。お前はそれに縋りつこうとしているように見える。自分の夢を高里におっかぶせて、あの世があったことの証明を高里に求めているように見える。それはお前のためによくないことだ、広瀬」
後藤「人は汚い卑しい生き物だよ。それは俺たち人が背負った宿命で、人に生まれた限りそこからは逃げられやしない。エゴのない人間はいねえ。我欲のない人間は人間じゃないんだ」
終始ずっと高里の身の回りで起るエスカレートしていく祟りを見せられる展開はちょっと退屈で途中から飽きてきた(汗)が、この部分の葛藤を感じさせるところに個人的に感慨深いものがある。
話の終盤に広瀬は高里からエゴを引っ張り出そうとするが、高里にはそういうものが無意識レベルにおいてもなくて、やはりとらえどころがなかった。
物語の終盤で明らかになること(ネタバレあり)
…それもそのはずだった。
最後に高里が異世界から来た泰王(たいおう)を守る角を失った麒(きりんの雄?)=神獣であり、その神獣を守る守護霊みたいな存在が祟りの正体であったことが分かった。
広瀬は人間らしく卑しく高里に”嫉妬”する。
異世界のモノを異世界に帰らせる”正しいこと”が広瀬には受け入れることができなかった。広瀬には高里が自分と同じ人間であって欲しかった「自分がちっぽけな人間に過ぎない」という抗えない現実を突きつけられて、広瀬(=読者)は逆にシニカルで残酷な現実を突きつけられる「この世に居場所がない自分は、どこまでもいっても卑しい人間に過ぎないのだ」ということを改めて自覚せざるをえない。
高里の周りにまとわりつく幽体を目にしても、広瀬のように右往左往せず現実をただ只管生きる後藤教諭の視点しか、自分はもう持ち合わせいないくらい年をとったのかも(苦笑)まあ、25年前に読んだら、もう少し違う感想を持ったのかもしれないなあ…なんてことを思ったのだった。
高里-広瀬-後藤、この3人の誰の視点でこの話を読むのか?
…それによって、感想が変わる気がする。
自分は後藤よりの広瀬で読んでいるんだと思うが、若い人は高里よりで読むんだと思う。そうすることで、広瀬と同じように最後に衝撃を受けることになる(苦笑)
…つーわけで、12国記の出だしとしては、そういう人間描写の暗い部分を味わうことができたきがするので、とりわけ良い!わけではないが悪くはないかな?って感じで、個人的には65点ぐらいって感じでした。
もうちょっとのめり込む面白さが欲しい感じだが、それは次の作品に期待したいところです。
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