「言ってはいけない」を読んだ感想

『言ってはいけない~残酷すぎる真実~』橘玲

私達は残酷な真実より慈悲深い嘘を選択する

この人の本は何度か読んでいる。何の本を読んだのか、タイトルも内容も覚えていないが、この著者はリアリズムを追求しているようで大変おもしろい。あと、頭が悪い私でも読みやすい構成になっている。

当たり前の事実を、歯ざわりのいいきれいな言葉によって、我々は騙されて日常を生きている。というよりも、真実はだいたい生々しくて見たくないので、我々は直感的に真実を知っているにもかかわらず、残酷な真実よりも慈悲深い虚偽を選ぶ傾向がある。

遺伝子の影響をこれでもか!と書き立てる!

遺伝子によって運命が決まっているというのは自由意志を否定する決定論。自分の人生が親の遺伝子である程度決まっているとしたらどうするか。科学や心理学に基づくデータに基づいて、その因果関係の強さを事細かく掻き立てているのが本書の特徴だ。

馬鹿は遺伝する=IQは遺伝する。依存症や精神病は遺伝する。猟奇的な犯罪も遺伝する。収入が高い知能エリートは教育費を掛けているから頭がいいというよりも、賢い遺伝子を持っている親から生まれたという事実も否めない。ブスと美人の経済格差は3600万円。辛辣な事実が読者に突きつけられていく。

でもよくよく考えれば、ブサイクよりカッコいい人の発言のほうが、説得力があるのは当たり前。カッコいいことは経済的にも成功しやすい。頭がよければ稼げる。稼げればモテる。ある意味で好循環が生まれる。そのレールから外れると浮上できない。

この本はある意味で希望の本

この本に書かれている真実に打ちひしがれる人もいるかもしれないが、遺伝因子と環境因子の問題をこれでもかと正確かつ分かりやすく書いてくれることで、自分の思考力や性格の正体がいくらか分かってきた気がする。

そうして決めつける必要はないが、自分にはもともとどういう傾向があるのかということが分かれば、生きていく戦略も立てやすい。遺伝情報は後から書き換えられないので、一番最適な解を見つけて生きていくしかないと割り切るしか無い。

例えば私の場合は、我慢してできないことを我慢し続ける努力って無駄だなと最近良く思うが、それをダメなやつと決めつけるのではなくて、もともとこういう人間の自分をどの環境に置けばよいか?と導くことができるのではと思っている。無駄な努力を続けているとしたら?すぐにやめたほうがいい。

さらに個人的なまとめ

そういえば、美人が若くして死ぬことを佳人薄命と言うが、これは美人が死んでしまったという嘆き悲しみが倍増されるからであって、ブスも多く死んでいると思われる。ブスが死んでも話題にならないのではないだろうか。美人が若くして死ぬかどうかは統計的に調べないと分からないが、たぶん美人が早死にする因果関係はない。

※最後に、ブスなんて言葉を安易に使うべきではないと思うのですが、美人を語った時点で美人でない人が背後にいることになってしまう。この世の言葉は、だいたい表と裏でできていて。きらびやかな言葉の裏には、必ず残酷さが隠されている。でもそういう言葉は時々意識的に掬い取らないと物事を見誤る。

例えば、週刊プレイボーイを開いて、自分はどの女の子が好みかな?と言い方を変えることで、不愉快な言葉を使わずに済むという人もいる。しかし、そういう配慮もまた事実を覆い隠していることにほかならず。詭弁のような気が私にはします。

…というわけで、矛盾した言い方になりますが、これからはもっと慈悲深い嘘が自然とつける人間を目指そうと思います。

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