いつか家を買おうと思っていると、いつまでも家を買えないらしい。とある不動産屋さんに言わせれば、人生は「妥協と諦め」であるそうだ。たまに存在しない家を探しているお客さんがいるそうだ。私のことかもしれない。理想のお家は高い。家の質は値段に比例する。いい家を追求するとグレードが上がる。節約する日々を送れば少しはお金が貯まるけど、それより家を立てる資材は値上がりし人件費も上がり住宅の価格は上がっていき、四十を過ぎた私には住宅ローンの期限が迫る。とはいえ35年ローンで75歳まで実際に支払うのか?と言えばぜんぜん支払う気がなく、健康診断に引っかかる項目はさほどないつもりだが、根拠なくあわよくばぽっくり逝き団信でローンを建て替える気がまんまんである。金は命より重い!というかどうせ死ぬのになぜ家を買うのだろう?ディオゲネスのように大ダルの中に住めばいいのでは…なんてことははっきり言ってどうでもいいのだが、あれこれ考えると結局は買えない。ペラペラの紋切り型建売物件でも昭和の薫りがするボロ屋敷でもはっきり言って何でもいいのだが、かといって間取りを自分で決めるこだわりの注文物件なるものに興味があるかと言われれば、まったくないとは言わないまでもさほどこだわりはない!何が欲しいと言われても何も別に欲しくない!できれば買わずに済ませたいが一生賃貸はなんとなく心に引っかかるものがある!不動産屋さんからしたら迷惑にも程がある。それ厳しいって!(言いたかっただけ)
家が買えない理由がいくつかあって、そのうちの1つ。そもそもいい家とはなにか?いい家が何か分からずいい家を探している。すごい矛盾じゃないか?たしかに大手ハウスメーカーが集うモデルルームでいい家の部類と思うが数ある中でも旭化成ホームズの家はどっしりして暖かく高いだけはある!と思ったのだが、じゃあ具体的に何がどう違うのか説明しろと言われても分からない。旭化成ホームズに高い金を払えば実現できるのだろうか?という、アバウトな理解でもいいのかもしれないが、きちんと知りたい。が、旭化成ホームズから買う気がない(というか買うお金がないのに)詳しく聞けるほど図太くない繊細乙女の…。(以下、中略)
エアコンのいらない家には家の構造により温かい家とはどういうものか?を総合的に網羅してくれる理系的な本と言えばいいか。設備設計者(環境エンジニア)の著者によるイラストが多くてわかりやすい解説。写真ばかりでイメージだけで良さげなやつをあまり押し付けずに理論張りで説明してくる稀有な書籍。例えば、熱の遮断性能が高いのは空気だそうだ。熱の伝導率を比較すると空気の層は1.5cmは木10cm、土67cm、コンクリート105cmと同じだそうだ。そんなばかな薄い空気の層を作ったビニールハウスと鉄筋コンクリート造が同じレベルの温かさなものか。空気が熱の遮断力が高いのはなんとなく知ってはいたし、熱伝導率だけで部屋の暖かさが定義できるほど単純ではないものの、単純に熱伝導率だけで言えばこの結果になるのだそうだ。熱伝導率が高いといえば金属でヒートシンクの材料になるアルミや金、銀、銅が思い浮かぶが、これらの家は寒いってことか?などと新たな疑問が生まれる。そんな雑学に富んだ内容になっている。ただ、いろいろな選択肢があることは分かったけど結論から言うと何がベストなんだよ?ていうのが、わかりにくい本だ(すべてを通して読まないとストーリーが見えてこない。逆に全て目を通せれば理想の家が分かる)。コンクリート住宅は物にもよるが暖かくない(ただ、温かい家もある気がする)コンクリートは温まりにくく冷めにくいのでエアコンが最初は効きにくいそうだ。言われてみれば確かにそうだ。コンクリートの住宅でペアガラスだけで別に暖かくない家があり、かといって蓄熱性があるかと言われればそうでもない。アレは一体なにがダメなんだろう?と考えてみると、たぶん光が入らないからだ。換気も最悪だ。欠点が分かってくる。欠点は分かっても家を建てた後じゃわりと手遅れでだましだまし生きていくしかない。人生と住宅は同じらしい。南向けのタワマン最上階は冬でも半袖でエアコンいらず(とはいえ、そのような話を聞いただけで行ったことはないのだが)というのは、まあそうなるだろう。その家をどのように使用するか?で選択すべき環境は変わってくるのかもしれない。自分の場合は昼間だけではなく夜間も暖かいほうがいいので、断熱性並びに気密性をがちがちに高めたほうがいいのかもしれない。風の通り道を意識した家がいいなんていいはじめると、熱と風はトレードオフの関係にあるのでこれまた難しくなるが、そういう話もいっぱいつまっている。そして最終的へ屋上にビニールハウスを建てて暑ければ天井をパカっと開けば万事OKな気がしてきた。(全くのやる気なし)光や電気の性質や風の取り入れ方を考えて家を作らないといけないというのが分かった。素人が窓をペアガラスに変えたとか断熱材を入れてみたとかやってみてもほぼ意味ない理由も分かった。エアコンの除湿は弱冷房と同じ仕組みであり、弱冷房だと寒くなるから弱暖房を同時にかけるという非効率に稼働させることだというのが目からウロコだった。発電の仕組みから電気の性質を探る話までうんちくがいっぱい詰まっていた。エアコンや24時間換気に頼るとしても空調をデザインしないといけないということか。家って奥がふかいと改めて思った。よけいに何も買えなくなる。完全に理解するには注文住宅を3回ぐらい立て直して経験するのがいいんだっけ?3億円ぐあり必要だな。サラリーマンの生涯で稼げる所得だ。最低3回生まれ変わらないと理想の家すら買えないのか。もうため息しか出ない。
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