ネタバレあり。
萩尾望都『トーマの心臓』を読んだ。
森博嗣の小説でこの作品を知り、冒頭を読んで先が気になったが、読み切る自信がないので、漫画で読んだ。原作のほうが間違いないだろう。
結論からいうと言い方は悪いが「かなり当たり」だ…最初から最後まで飽きなく、だんだん作品に引き込まれて読める感じで読めた。素晴らしい。無駄がない。ほとんど学内での少年たちのやり取りだけなのに、これだけ作品に引き込まれる作品つくれるのね。
少女漫画のボーイズラブなんて、読めたものではないと思っていたが「名作」だと言われているなら、読んでみたらきっと誰が読んでも面白いと違いない…自分にも面白いに違いないと思ったわけだが、その狙いは間違いなかった。
面白かった。
トーマ、ユーリ、オスカー、エーリク、アンテ、etc…それぞれが心に何か欠けているところがあって、彼らの心のうちがだんだん明らかになっていく、女の子よりも男の子を好きになるのにまったく無理がない…同性が自分の心の隙間を埋めてくれると感じるものだ。
みんな顔も心も美しい。
…アンテは微妙なやつだけど(苦笑)あえてここに加えたのは個人的に「脇役のアンテ」が好きなので。ユーリとオスカーは大人びてるし、エーリクはやんちゃすぎる。アンテはまだ幼い感じがかわいい。他にも話を盛り上げる脇役はいっぱいいるけど、彼は最初から最後まで気になる。まあ、それはさておき、、
言われてみれば自分にもそんなふうに同性に自分の心のスキマを埋めてもらおうと時があったのかもしれないが、ほとんど忘れてしまったというか、そもそも男か女かはささいな違いでしかないのかもしれない。
いろいろとツッコミながらなんとか最後まで読もうなんて考えていたが、なにもつっこみどころがない。違和感なくスーッと読めたので、これでどんな少女漫画でも読めるきがしてきた。
ユーリにとって、トーマは天使、サイフリートが悪魔、でまとまりある話になっている。キャラクタはそれぞれ。どことなく片思いだがみんな優しいところがある。性的な話がどこかでからむかと思えば皆無。謎が残る部分もなし。人間の美しい部分と弱い部分を抜き出してコンパクトにまとめられた名作。
そういえば最近の米国映画を見ても「神なき時代」として描かれるのが当たり前になってきているが、ユーリは最後にボン大学に転入して神学者になることを決めた=ユーリのキリスト教の信仰が本物だという終わり方もまたいいよね。
現代は神なき時代だがだからこそ神の時代に回帰する作品は読む方も安心する。自分に信仰心が無くても信仰している人がいるということだけでほっとする要素がある。
他の萩尾望都作品を読んでみたいと思った。
コメント