漫画『蟹工船』(原作:小林多喜二)(漫画:原栄一郎)の感想…労働者の団結が自然発生するのは必然であった。

徒然草2.0

青空文庫に原作が在るのは知っていたし昔読んだ気もするのだが…誰かの解説を読んだだけだったかな…内容が全然わからない。小説が嫌いなのもあっていまさら時間を割いて読む気にもなれないのだが、漫画ならいけるか?と思い読んでみた。漫画の内容は原作に忠実だ。時代を超える面白さ。単純な共産主義の運動を肯定する話と思っていたが、ロシアの赤化運動は侵略主義/帝国主義の活動だと見做し批判的な見方をしており別にナショナリズムを否定しておらず中立的に描写されている。(特攻に拷問死させられた小林多喜二はさぞかし過激な運動家だろうと思っていたがそうでもない。ただ、この本を読んで共産主義者が増える懸念というのはあったのだろう)悲惨な蟹工場船の労働を経て漁夫と船員のすべての面々が主人公であり、渾然一体と管理者に対して団結して自分達の主張を突きつける。国際的に評価が高いのもうなづける。誰の心にも入り込みうる時代を超えた作品。こんなにも追い詰められたら死ぬ前に一矢報いてやろうじゃないかと誰もが思うだろう。蟹工船のいち員になってその気にさせてくれる。まあただ逆に言えば、そう思う人が増えないと何も起こらないということなのかもしれない。最終的に管理者の浅川の立場が無くなっただけで何かが解決したわけでもない。小林多喜二はわりと小説家の中では好きな志賀直哉と幾ばくかの交流があったらしい。押し付けがましくない天才的な文体が確かに志賀直哉に近いものを感じる。非常に惜しい死に方をした作家だった。つーわけで、他の作品も読んでみたいと思った。

徒然草2.0
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