トルコでは、給料をもらうとすぐにドルやユーロに替えたり、急いで使ってしまうのが普通だという。理由は単純で、トルコリラが慢性的な高インフレ通貨で、現金を持っているだけでどんどん購買力が落ちていくからだ。
通貨としての信頼が弱い国では、「お金を貯める」というより「価値を保存する」ことが最優先になる。だから通貨ではなく、より強い外貨や、その瞬間に使える“モノ”に交換する文化が生まれる。
日本円については、「円安はいずれ戻る」と考えている人がまだ多い。しかし長期的に見ると、日本がかつてのような強い通貨の時代に戻る保証はどこにもない。
人口縮小・財政赤字・生産年齢人口の低下など、構造的な要因が積み重なれば、通貨の価値が慢性的に弱まっていく可能性は十分ある。私は、日本円もトルコリラほど極端ではないにせよ、「持っているだけでは価値が目減りしやすい通貨」へ近づいていくのではないかと考えている。
もしそうなった場合、多くの人が資産の一部をドルやほかの強い通貨へ分散したり、すぐに使える実物資産へ変えたりするような行動が当たり前になるだろう。そして、その時代に必要とされるビジネスが何かを今のうちに考えておくべきだ。
たとえば、駅前に質屋やリユースショップが増えているのは、単なる偶然ではなく、価値を“モノ”として残そうとする需要が増えている兆しなのかもしれない。大黒屋のように質屋とリユースを扱う企業は、すでに実物資産の仲介業を担っているわけで、価値保存が重視される時代には、こうした業態がより重要になる可能性もある。より手軽に取引きが可能なメルカリやそれに準じたサービスが伸びるかもしれない。ブランド品の本物と偽物を見分ける仕事が増えるので、今のうちに鑑定士のようなスキルを磨いたりブランド品や骨董品などの価値が落ちないモノを趣味を兼ねて所有してもいいのかもしれない。
極端な話、今後の社会は「現金よりモノのほうが信用できる」という方向に振れていくかもしれず、その流れに乗った企業が莫大な利益を上げる未来も想像できる。

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