トレモスのパン屋を読んだ感想…これは現代思想だ。

徒然草2.0

ネタばれあり。

大人が考えさせられる本だと聞きまして、トレモスのパン屋という本を読んだ。

たしかに読んでいるとグイグイと引き込まれて先が気になる!

最初はマーケティングの本だね!と思ったのだが、最後のほうになってそれは「ちょっと違うかな」マーケティングの本だと言い切るのは浅い気がしてきた(苦笑)まあ、読書感想なんていうものは、どこにフォーカスするか?によって感想は違うでしょうが、、こどもにこの本の内容を聞いたら「売れないパン屋が売れるようになる話」と言っていたそうで、まあ間違っていないけど「視点そこか?」とびっくりした。

いい話だとか、秘密を探るために隣のおいしい食パンを売るお店に弟子のカルルを忍び込ませたが、もうすこし職人ポルトは他人の気持ちを考えないといけなかったとか…まあとってつけたような感想は思い浮かぶ。ああ、これは、最近になって読み直した中島敦『山月記』に似たところがある。自分の能力にうぬぼれずに努力し続けないといけないなーとか、教訓めいたことも感じ取ったりもしたのだが…。

最終的にパン職人のポルトは、どうするのが正しかったのか、私にはわからなくなった。というか感想をどこに置いたらいいのか、よくよく考えてみると「わからない」だから、大人は考えさせられたとかいう感想に一様になるのかもしれない。

でも、これはある意味「絶望」とまではいわないが、パン職人の技術は行きつくところまで行ったら上はないということを意味しないか。

水さえよければいいパンができるわけですよ。

それでも、町のみんなのためにパンを焼く。

それはすばらしいことだけど、それでいいのだろうか?とも思うんですよね。

ほかのパンよりも美味しいという付加価値がなくなったら、パン屋は他と差別化できなくなり、現代であれば最終的には機会にとって代わられていく。それで、私たちは一体どうしたらいいのだろう?一体どこに私たちは向かっているのだろう?と暗澹たる気持ちになった。少なくとも絶望ではないかもしれないが別に希望でもない。なんだか、新しいジャンルの絵本というかね、紋切り型のエンディングじゃないから「現代思想」かなと思った。

それでもポルトはパンを焼き続けていかねばらない=それでも私たちは生きていかねばならない

それがパン職人ってものだし生きていくってものだ、終わらない…むしろ日常は続いていく。そういうお話だと解釈した。

徒然草2.0
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