資本金も資本準備金も「会社に出資された資本(自己資本)」の一部であり、広い意味ではどちらも資本金の一種と考えて差し支えない。ただし、法的な性質と取り扱いには明確な違いがある。
資本準備金は、会社に出資されたお金のうち資本金に組み入れなかった残額を、会社法の規定に従って積み立てたものであり、資本金と比べて法的には柔軟に扱える。例えば、株主総会の決議などを経て、資本剰余金に振り替えて使うことができる。
資本金を多くすると法人住民税の均等割が上がるなど、税負担の面で不利になる。一方で、資本金の多さは社会的信用につながり、公的入札や企業との契約条件を満たす要素となることがあり、また金融機関や投資家からの信頼も得やすくなる。
資本準備金の制度は一見すると税務当局や第三者にとって不要に見えるが、実際には会社法における資本維持原則とのバランスを取るために設けられている。出資金をすべて資本金にすると、増資や減資のたびに登記や法的手続きが必要になり、会社経営に柔軟性がなくなる。そのため、出資金の一部を資本準備金として扱うことで、資本政策における機動性を保つことができる。
また、配当を出す際などに一定の準備金を残すことが会社法で求められており、資本準備金を通じて自己資本の枯渇を防ぎ、株主や債権者保護の役割も果たしている。
資本準備金は経営者の一存では自由に使えないため、資本金よりは柔らかいが、利益剰余金のような即時の運用自由度はない。
したがって、経営者の視点で見た「使いやすさ」は、
資本金 < 資本準備金 < 資本剰余金 < 利益剰余金
という序列になる。
資本金は、例えば経営者の判断で自分や従業員への給与の原資として使用することは、会計的には可能である(現金という意味で)しかし、法的には資本金という名目を減額することはできない。資本金は会社の設立時に出資された元手であり、「この会社にはこれだけの信用・基盤があります」という法的な表示なので、帳簿上は一定額として固定される。
つまり、会社の現金が減ったからといって資本金の金額が減るわけではなく、資本金の取り崩しや減額には会社法に基づく正規の減資手続きが必要である。
経営者は会社の資産を管理・運用する立場にあるが、会社のお金=自由に使える私的資金ではない。特に資本金や準備金は、**経営判断で自由に取り崩してはいけない「制限付きの資本」**である。
減資とは、資本金の額を減らす手続きのことを指します。日常的に行われるものではなく、特定の目的があるときに使われる、やや特殊な会社行為です。
減資が行われる主な理由には、次のようなものがあります。
・税制上のメリットを得るため(たとえば資本金を1,000万円未満にして消費税の免税を受けるなど)
・累積した赤字(欠損)を補填するため
・M&Aや会社の組織再編に伴って資本構成を見直すため
減資には2つの種類があります。
1つは無償減資で、これは帳簿上の処理だけで実際に現金は動かないものです。
もう1つは有償減資で、これは資本金を減らすと同時に、株主に現金などを返すものです。
実務では無償減資が行われるケースがほとんどです。実際にお金を返す有償減資は、株主構成の整理など特殊な事情がある場合に限られます。
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