ネタバレあり。
田中慎弥の『共食い』を読んだ…なんというか、よく分からなかった。
川辺りで生活する者たちの日常に、何も感慨深いものがない感じだった。
自分に暴力をふりたくなる性癖がないからなのかもしれない。
…あんまり上手く想像ができない、つー感じ。
何度読んでも、想像ができないシーンがいくつかあった。
別にそれはそれでいいのかもしれないが。。。
忌憚のない着飾らない少年の心を描いている、とでも言えばいいのかな。
いや、主人公の遠馬は18歳だからいい年か。
18歳は成人の歳になるわけでわりといい大人。
みんなそうだが、そこまで他人に興味がない、つーか。
これ、16歳設定ぐらいにしたほうがよかったんじゃないかな。もしくは15歳ぐらいかな。
もう少し幼いほうが合っている気がする。
しょうもない父親意外は、すべて登場人物が女性で、とくに主人公にも特徴がないと感じていた。
あるのは性交中に暴力をふりたくなる性癖があるくらいなものだが、なんかそこに対して何も感ずるところがない。
…どんな話になるのか、だいたい分かっていたが、なるようになった感じ。
主人公の遠馬が母親とは呼ばない存在「仁子さん」が、
彼女の千種に暴力を奮った報復…ついでに、かつて自分が振るわれた暴力に対する報復として、
片腕の剣士が如く立ち向かい、あっさり父を刺し殺す「女の強さ」
感慨深い感覚はないにせよ、自らの”卑怯さ”を自覚するすきもないほどに、カッコよかった。
義手の先が外れる、ぽこんという変な音が聞こえた気がした。
まー、読んで良かったのかな、という感じ。
…でも、読まなくても、よかったかな、という感じ。
これまで読んだ芥川賞作品はどれも読んだ後に「振り回される感じ」があったはずだが、そういうものが自分の中に生じなかった。
…つづいて、同じ書籍に含まれていた「第三紀層の魚」という話。
私は、勝手に「共喰い」の続き物だと思っていたのだが…ぜんぜん関係なかった…っぽい。
同じく川辺りで生活している少年の話。
祖父も父もいない少年が、くたばる直前に曽祖父から父性を感じ取ろうとする話というところだろうか。
こっちのほうが「共喰い」よりも読みやすく、飽きずにさっと小説の世界に入って読めた感じがした。
可もなく不可もない読後感(どくごかん)でした。
どっちが好きかで言えば、共喰いよりこっちになっちゃうかなあ。
「共喰い」の映画はまた小説とは違うらしいので、その違う感じを味わうために見てもいい気がするけど、
それよりも、個人的には芥川賞縛りで言えば「人のセックスを笑うな」の映画はわりと好きな世界だったので、
小説を読んでみてもいいかな。図書館では借りにくいタイトルだが。。。。。
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