人は老いたら死ぬ。
とても当たり前な話だが、現代人はそうは思っていないらしい。最近わたしの周りで死なないつもりの人が多くいる。たしかに、わたしたちは頭ではいつか死ぬと分かっていても、自分は昔と変わらない自分であるという意識があり、それが無くなってしまうという想像もつかないのか、それとも想像したくないのかもしれない。まあ、自分が死んだ世界なんて自我がないわけだし想像したところであまり意味もない。生前整理して生存に必要なものは除いて遺産を早めに次世代に渡しておく終活をしておくくらいだが…自分も証券口座がありすぎる。消えても良い財産ではあるが、2つくらいにまとめておかないと。それはともかくも、、
私の周りでは「120歳まで生きる」とか「火星で暮らす」とか「医療の発達で私たちが歳をとることには痛みのない体を手に入れられるようになる」と、いずれも異なる人が発言している。これはおそらく、老いは病気だと主張する本が流行ったことも一因としてあるのではないか。
日本の長寿社会というものを客観視していると個人的には気が狂いそうになるのだが…。信長の敦盛で語られるがごとく人間50年で十分なのに長生き施行の世の中で70や80になったことを考えないといけない。高校の時に平均点の半分ぐらいとれれば成績はつくだろ?と狙ってとっていた私としてはたぶん年齢もそれくらいだろう。男の平均寿命はだいたい80歳だから40点とれれば十分だ。ああ、なんだもう俺の寿命じゃないか。
『LIFESPAN 老いなき世界』(デビット・A・シンクレア)というやつ。過去にパラッと読んだはずだが内容を覚えていない。いろいろなことがふわふわした感じで確信を削いだ状態で書かれていて、私の脳内にある箸にも棒にもかからない。もともとひっかかるものがないのかもしれないけど、。
シンクレア「老化は1個の病気である。私はそう確信している。その病気は治癒可能であり、私たちが生きている間に治せるようになると信じている。そうなれば、人間の健康に対する私たちの見方は根底からくつがえるだろう」などと言っている。
…この本のせいで池田清彦という団塊世代の老人が『人間は老いを克服できない』などという当たり前のことを表題に据えた本を書いたのだろうと思ったらやはりそうだった。
老化により、がん、糖尿病、動脈硬化、運動機能や認知機能が低下する。
老化の原因には2つあり、ゲノムの変異とエピゲノムの変化だそうだ。
コピー元のDNAが紫外線などで壊れてもとのとおりに修復されないのをどうにかするか、エピゲノムというDNAの塩基配列を変えずに遺伝子の働きを変えるものをコントロールするかが重要なのだそうで、サーチュイン遺伝子のフラグをONにしてエピゲノムの状態を若い時のままに保てば老化を防げるという。テロメアとかヒストンとか目に見えない世界の話はついていけない。
ああ…だからか、私の周りの長生きしたい人は、カロリー制限、断続的断食、適度なストレスを与えて、カレーを食べている。ターメリックが体に良いらしい。細胞レベルでの変化を食事でできるとは到底思えない非科学だと思う…まあ食べすぎるのは体によくないし少食がゆえに長生きする生物はいるのかもしれないが、、、
結局のところは池田清彦がいうように、ジャンヌ・カルマンという122歳まで生きた記録の人が亡くなったのは1997年でありそれから記録が更新されていないことから人間の寿命はこのへんが限界で150歳まで生きるようにはならないと述べていた。
ただその一方、テロメラーゼの活性が低下してテロメアが短くなり細胞分裂ができなることが生物ごとに決まっていることを解消することができれば飛躍的に生物の寿命を延ばせるというようなことも書いているので別にシンクレアの発言がすべて誤りだという話でもない。絶対に間違っていると断言することが学者の仕事ではないのだろう。
あと池田清彦によれば特に根拠は書かれていないが「感動すると寿命が短くなり怒ることで寿命が長くなる」らしい。よくわからないが世間に怒ればいいか。ぷんすかぷん。
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